ニュース
ニュース
2009/03/02
拙速な批准手続きには当事者の合意得られぬ、障害者権利条約で外務省に緊急申し入れ


 民主党障がい者政策プロジェクトチーム(PT、座長:谷博之参議院議員)は2日、中曽根外務大臣宛に申し入れ(下記ダウンロード参照)を行った。これは今週中にも外務省が障害者権利条約の公定訳を確定し、批准のための国会提出を閣議にかけようという動きに対して、急遽行われたもの。

 谷PT座長のほか、副座長の神本美恵子、白眞勲両参議院議員、事務局長の園田康博衆議院議員、事務局次長の金子恵美参議院議員が外務省を訪れ、総合外交政策局の廣木審議官に対し、中曽根大臣宛の申し入れ書を手渡した。

 民主党は、昨年発効した障害者権利条約をわが国が早期に批准すべきと考えている。しかし、現状では、同条約の履行をきちんと担保する国内法制が全く未整備であることから、まずは障害者基本法、司法へのアクセス、教育制度など国内法制の整備に道筋をつけることが先決であると考えている。このことについて、参議院外交防衛委員会の理事でもある白副座長は、「このまま審議といわれてもすんなり通すことは難しいのではないか。国会提出前に環境整備に意を尽くしてほしい」と廣木審議官に求めた。

 白副座長はまた、条約の公定訳について「閣議を通ってしまうと国会では修正ができないというのは問題」と指摘。神本副座長は「閣議にかける前に公定訳の草案を民主党に提示いただきたい」と求めた。これに対し、外務省の志野人権人道課長は「持ち帰り、内閣法制局と相談してみたい」と応じた。

 神本副座長は『次の内閣』ネクスト子ども・男女共同参画担当大臣としての視点からも発言し、「『児童』」と訳すか『子ども』と訳すかで審議時間が費やされた子どもの権利条約の二の舞になってしまう」と懸念を示し、外務省の誠意ある対応を求めたが、廣木審議官から明確な回答は得られなかった。

 この後厚生労働記者会で記者会見した園田事務局長は「障がいを持つ当事者の方々が期待している国内法の整備は目途さえ立っていない」と訴え、このまま批准だけが先行すれば、かえって国内法制の整備にブレーキがかかりかねない緊急事態に理解を求めた。金子事務局次長も条約交渉に長年携わってきた障がい当事者の理解を得ない条約批准であってはならないとの見解を表明。「不十分な我が国の障害福祉を前進させる方向性をはっきりとさせていきたい」と、今後の障害者政策PTとしての意欲を述べた。
ダウンロード
PDF 障害者の権利に関する条約に関する申し入れ
PDF 障害者政策PT役員構成と趣旨
記事を印刷する