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2009/03/04
年金記録問題への当面の対応
=被害者の迅速な補償を最優先に=
『次の内閣』ネクスト年金担当 長妻昭

 年金記録問題の発覚から既に2年余りが経過し、この問題の中心となってきた「厚生労働・総務部門合同会議」も、ちょうど100回目の会合を迎えた。
 この間、民主党は積極的に調査を進め、発端となった「消えた年金」(基礎年金番号の付与の際に統合されずに、持ち主不明となった年金記録)にとどまらず、社会保険庁に全く記録の無い「完全に消えた年金」問題、それらへの対応や被害者補償に係わる社会保険庁の不備、さらには社会保険庁等による「消された年金」(年金記録の改ざん)問題などの存在を明らかにし、政府与党に迅速な被害者の補償、問題の全体像の把握、責任の明確化を求めてきた。
(これまでの取り組みと、残された課題については下記ダウンロード参照)

 しかし、年金記録問題の闇は深く、次々と新たな事案、疑念が生じている。政府自民党は「被害者の救済が最優先」を看板に掲げるが、その実態は被害者補償が進まないばかりか、その看板を言い訳に必要な調査を回避する始末である。麻生内閣が真剣に年金記録問題に取り組む姿勢を全く見せず、時間ばかりが経過していく中で、本来の年金を受給できないままにお亡くなりになる事例も確認されている。

 民主党としては、今後も引き続き個別事案の究明、全体像の把握、責任の追及に全力で取り組んでいくが、今、最も必要なことは理不尽に年金額を減額され、或いは本来受給できる年金を全く貰えないままに多くの方が苦しみ、時にお亡くなりになっていく現状を早急に改善することである。
 年金記録問題は、元々事務作業の問題であるが、それが今や国家に対する信頼の問題になってしまった。国家に対する信頼を回復し、被害者の方の一刻も早い補償を実現するためには、政治の大きな決断が不可欠である。

 年金記録問題は3年目に入ったが、未だに問題は解決していない。民主党は、被害者の補償を最優先とすることを基本に、以下の方針で年金記録問題に取り組んでいく。


1.基本的な考え方
○本来受給すべき年金額を、年金記録の不備等により受給できていない被害者が、一刻も早く本来の年金額を受け取ることができるようになることを最優先とする。
○そのため、人・モノ・カネを短期間で集中投下し、国家プロジェクトとして国の威信を賭けて、年金記録問題に取り組むとともに、これまでの法制度等にとらわれない柔軟な対応を取る。
○引き続き調査活動に取り組み、個別事案の実態解明、全体像の把握、責任の明確化を進める。

2.迅速な被害者補償の実現
(1)迅速訂正の実施
 政府は個別の事案についてそれぞれの記録等を確認し、それに基づいて年金受給額の訂正を行うことを基本としている。しかし、そもそも事実確認の困難な事案を対象としており、領収書等の提出を求めることには無理がある。そこで、社会保険庁の調査によって本来の年金額が支給されていない可能性の高い、まずは以下の対象者については、本人の訂正希望を聞いた上で、本人確認及び一定のチェックをして、記録を訂正することとする。
<迅速訂正の対象者>
○「名寄せ便(08年3月までに送付)」の送付対象者で「訂正有り」と回答した者(「入念調査」の対象者を含む)のうち、「抜けている記録」のヒントを提示して本人が「自分の記録である」と認めた者
○厚生年金改ざん問題で、社保庁の3要件に該当する者(6.9万件)のうちの従業員
○第三者委員会であっせんされた事案と同等のレベルの要件を満たす者

 以上の他にも、本来受給すべき年金額が不当に減額されている蓋然性の高い受給者等については、一定の要件を設けた上で、迅速に記録訂正する仕組みを検討する。なお、いずれの場合も、不正受給者には事後的に返還を求める仕組みを構築する。

(2)第三者委員会の増強
 当初「確からしい」申し出は訂正するはずだった第三者委員会の審査は遅々として進まず、申立から結論を得るまでに1年以上の時間を必要としている。「申立人の立場を十分に汲み取る」という趣旨に沿った委員会とするために、以下の措置を講じる。
<第三者委員会見直しの内容>
○人、モノ、カネを投入し、委員・事務局体制を大幅に強化し、証拠収集能力を高め、認定の基礎となる資料を迅速に収集すると同時に審査期間の短縮を図る。

(3)再裁定の迅速化
 記録の誤りが確認されても、そこから実際に正しい年金額が支給されるまでに、長期間を必要とする事案が数多く確認されている。高齢の受給者等が多いことから、正しい年金額の速やかな支給は喫緊の課題であり、以下の対策を検討する。
○社会保険業務センターの人員の飛躍的な拡充
○再裁定のあり方の見直し

(4)給付遅れに対する延滞金の付与
 年金保険料の延滞納付に対しては高利(14.6%)の金利が付与されるのに対して、年金給付については、それが社会保険庁側のミスが理由であっても、延滞支給に対して全く金利等が付与されない。このアンバランスに対する国民の不満は強く、また納付された保険料に対する年金支給額の適正な経済的価値を保障するために、記録訂正等によって遡及的に年金が支給される場合には、当該遡及分に対して一定の延滞利息的な付加支給を可能とする法制度を検討する。

3.実態解明等
 年金記録問題は多岐にわたり、いずれも看過できない。中でも以下の案件については、早急な真実の解明が必要であり、引き続き、これに取り組んでいく。

(1)紙台帳8.5億枚とコンピュータ記録の照合
 全ての人に正しい年金を支給し、年金に対する国民の信頼を回復するためには、その基礎となる社保庁コンピュータの記録が真正であることが不可欠である。現存するとされる紙台帳8.5億枚の全件照合に10年間の期間を要すると社保庁は主張するが、より短時間で実施するための「ヒト・モノ・カネ」を精査した上で、速やかに取り組んでいく。

(2)「偽装脱退」「偽装全喪」
 厚生年金については、標準報酬月額の改ざんの他に「偽装脱退」「偽装全喪」(いずれも被保険者期間の短縮による年金額の減額となる)については、調査が行われていないため、その実態解明を進める。

(3)「脱退手当金」
 厚生年金被保険者が、退職等の理由により資格を喪失する際に支給されていた「脱退手当金」については、多くの方から「受給をしていない」との申し立てが行われており、中には「なりすまし受給」の疑われるものがある。しかし、その実態は全く解明されておらず、被害者の補償も進んでいないことから、早急な対応が必要である。

(4)基礎年金番号付番(平成9年)以降、現在までに消えた年金記録
 社会保険事務所の転記ミスや入力ミスなどが想定され、社会保険事務所運営の基本にかかわる問題であり実体解明と改善が急がれる。
 
(5)実態解明に必要なサンプル調査の実施
○現在の無年金者のうち、記録漏れによる無年金者がいないかどうかのサンプル調査
○「5000万件」のうち、政府が対応不要とする記録(1623万件)について、本当に対応が不要なのかどうかのサンプル調査
○厚生年金の旧台帳、別人台帳、事故台帳の入力状況のサンプル調査
○平成10―18年度の間に記録統合されたとされる927万人について、本当に統合されているかどうかのサンプル調査

(6)年金保険料納付記録の原簿及び年金関連申請書類等の永久保存
 年金は国によって生涯に渡り記録が管理されるべきものである。コンピューターへの入力ミス等が発生する可能性もあり、納付記録の原簿や年金関連申請書類は、保管期限を設けずに永久保存とする。

(7)責任追及
 年金記録の解明、被害者の補償については莫大な財政負担が必要であり、これはすなわち国民負担に繋がる。このような事態を招いた責任者、当事者の責任を全く放置したままに国民に負担を求めることは認められず、事実の究明を十分に行った上で、責任の明確化を求めていく。その際、真実を申告した職員と、そうでない職員とに差をつけた責任の明確化も検討する。

 社会保険庁は、H22年1月から日本年金機構に移行することが予定されている。民主党は、年金記録問題をうやむやにするばかりでなく、年金の実施部隊に対する国会の監視が甘くなることから、これに反対しているが、仮にその移行が実施される場合であっても、上記の「迅速な被害者補償」「実態解明等」の確約が不可欠である。
以上
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