小川淳也議員は18日午後、衆議院消費者問題特別委員会で質問に立ち、政府案にある「消費者庁」の位置づけについて麻生首相らに質し、消費者行政の抜本的改革には繋がらない実態を質疑から浮き彫りにした。
消費者行政に関する法律が1800あるなかで、消費者庁に移管するのは29にすぎないことを小川議員は問題視するとともに、専属で担当するのが9、そのうち、もともと内閣府が担当してきた法律が6あるとしたうえで、「(消費者庁を設置すると)大きな看板を掲げる以上、説明がつく限り移したらどうか」との提案した。
小川議員はまた、「シンドラーエレベータ」社のエレベータに挟まれて高校2年生が命を落とした事件に言及した。「責任を明らかにしてほしい」と損害賠償を求めて訴訟を起こしている被害者の母親は消費者庁に期待を寄せていることを明かし、そのうえで小川議員は、「しかし消費者庁ができてもエレベータは建築基準法の問題なので消費者庁の所管法律にはならない」と指摘。
消費者にとって身近な法律を消費者庁に移すというのであれば、耐震偽装事件なども含め、こうした問題を消費者庁も関与できるようにするべきだと述べ、前向きな対応を麻生首相に求めた。しかし、首相は答弁を拒否。野田消費者行政担当大臣は所管しない理由について「消費生活に何らかの関わりがあると考えられるすべてを所管するとした場合、広範な分野の専門家等を集めた巨大官庁をつくることが必要になる」などと開き直り、「消費者行政に関する政府全体の司令塔として機動的に対応する簡素で効率的な組織としつつ、所管していくことが不可欠な法律29を所管することとし、その他の法律については必要に応じて所管する各省庁に対して訴追要求を行う」などとした。
小川議員は、「そんなことを言っているから半世紀にわたって引きずっている問題が残っているのだ」と語気を強めて批判。保険金の不払い事件の保険業法、偽造・盗難カードの問題の預金保護法、振込み詐欺救済法、やみ金融の問題などを列挙し、「すべて消費者庁への移管の対象外だ」と指摘。これらは役所の都合による振り分けにすぎないとし、「国民が求めているのは真摯に相談にのって、原因を究明してくれる機関。救済に働きかけをしてくれる機関、そして二度と同じ思いをする人を出さない機関」だと強調した。
そうした認識に関しての問いに民主党案提出者の枝野幸男議員は、森羅万象、世の中のほとんどのことが消費者と関わっていると述べ、これに対して日本では明治以来、分散管理というしくみで動いてきたと説明。そのうえで枝野議員は「残念ながら政府は行政の分担管理という古い構造のなかに何とか消費者庁を位置づけようと考えたのではないかと思う」と指摘。
そのうえで「今やらなければならないのは各業種の種類などに関係なく常に消費者の立場に立って、横串で消費者の立場で行動するしくみをつくらなければいけない」とも問題提起し、従来の内閣制度のもとにおける分散管理の縦割りの枠のなかでいくら組み換えをしても抜本的な解決にはならないと指摘。
民主党案ではそうした視点に立って、内閣の縦割り行政の外側に、しかし広い意味では行政の内側に、横串であらゆる問題についてすべて自分たちの主たる役割として所管できるという形として、消費者権利院のあり方を定めたと述べた。
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