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2002/04/22
衆院憲法調査会、沖縄で地方公聴会を開催
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 22日、衆議院憲法調査会は沖縄県名護市で沖縄地方公聴会を開催し、民主党からは中野寛成憲法調査会会長代理、島聡同会幹事が参加。

 公聴会ではまず、5人の公述人が意見陳述を行った。

●山内徳信さん(元読谷村村長で平和憲法・地方自治問題研究会主宰)
 住民をまきこんだ沖縄戦、人類初の広島・長崎への原爆投下の惨憺たる光景を目の当たりにした当時の国民が平和憲法を制定した。平和憲法の果たす役割は極めて大きく、戦後、今日の復興・発展のゆるぎない基盤となり、世界に国家の手本を示すことができた。憲法9条の改悪は時代錯誤であり、アジアの国々の猛烈な反発と不信を呼び、再び孤立と悲劇の道を歩む恐れがある。

●新垣勉さん(弁護士)
 沖縄県民のひとりとして、日本国憲法が定める非武装平和主義の原則は今後とも守り、発展させなければならない。日本で唯一の地上戦で得た教訓は、いったん戦争が起きたとき、軍は決して住民を守るものではないということ。「ぬちどう(命こそ)宝」という沖縄の思想は、沖縄戦での体験を経て定着した非常に深いもの。国家の利益は個人の尊厳に勝るものではない。

●恵隆之介氏さん(ビジネススクール校長)
 憲法9条の改正を主張する。有事の際の私権の制限は世界の常識。制限されて当然ではないか。現在検討されている有事法制だけでは対応できない。外国の場合は平時でも国家に敵対するものには迅速に交戦権を行使できるようになっている。沖縄県民の間では沖縄戦での経験や米軍基地集中などに対する被害者意識が強すぎる。

●垣花豊順さん(沖縄国際大学法学部教授)
 国民は根気強く憲法13条や24条に明記されている「個人の尊重・尊厳」の普及に努めるべきだ。これが国民主権・基本的人権・恒久平和の中核になる。個人の尊重は決して利己主義にはつながらない。

●稲福絵梨香さん(大学生)
 高校3年間、ボランティア活動に取り組んだなかで、ボランティアはする側とされる側とが共生的に学びあう共に生きる関係だと実感した。それが「奉仕活動の義務化」が実現すれば共生ではなく強制となり、戦時中の勤労奉仕と変わらなくなってしまう。お国のために勉強するのではない。あくまでも、学ぶことは権利であって義務化することではない。

●安次富修さん(沖縄県議会議員)
 米軍基地の整備・統合・縮小は県民の総意である。しかし、国際情勢のなか、米軍基地は日本をはじめ、東アジア・太平洋地域の平和や安定に寄与しているのは現実だ。日本が国際社会でどんな役割を担うかを考えたとき、自衛のための最小限の武力行使ができる自衛権を保持し、それを明記すべきだ。一国平和主義から脱却し、国家のあるべき姿を深く考え、国家の基本となる憲法を見つめ直す改正論議が必要。

 陳述人に対する質疑の中で、民主党の島聡幹事は「有事の際に憲法が定める基本的人権を保障するためにも法整備すべきでは」とした。それに対して弁護士の新垣氏は「提案された3法案を検討しても、国民が自衛隊をコントロールできるものではなく、政府に一切の権限を与えようというものだ」との考えを示した。

 また環境権などの新しい人権を憲法に明記することについて稲福絵梨香さんに質したのに対しては「憲法に明記する必要はない」との答えだった。さらに島幹事は、国会議員には憲法改正をする議論をする義務があることが憲法には定められているとして、十分な議論の必要性を指摘した。

 会場の参加者からは、沖縄戦における住民の犠牲や戦後の米軍基地集中の不当性、有事法制整備などへの不信感などの意見が表明された。

 公聴会終了後の記者会見では中野寛成憲法調査会会長代理が、00年の設置から調査期間を5年程度としている同調査会について、国会の常設機関とすることが望ましいとの考えを示した。

 この日は公聴会に先立ち、憲法調査会委員会一行は平和祈念公園(国立沖縄戦没者墓苑)を視察。祈念の碑に花を手向け、沖縄戦での戦没者名簿を刻んだ平和の礎を参拝した。

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