平岡秀夫議員、長島昭久両議員は23日午前、衆議院の海賊行為への対処並びに国際テロリズムの防止及び我が国の強力支援活動等に関する特別委員会で行われた締めくくり質疑において、「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律案(海賊対処法案)」について、国会承認の必要性や問題点等を指摘。麻生首相はじめ関係大臣に見解を質した。
平岡議員は冒頭、本法案に関して十分な審議と、修正協議を行うべきだと主張。本日の採決に対しては時期尚早だと異議を唱えた。
そのうえで、平岡議員は海上警備行動の発令、海賊対処法案の内容等、今回の政府による海賊対策の進め方に対して、多くの国民が(1)ソマリア沖で自衛隊が武力抗争に巻き込まれないか、(2)海賊対策として自衛隊が海外に派遣されることにシビリアン・コントロールが確保されているのか――と不安を抱いていると指摘。ソマリアは1960年の独立以来内戦状態が続いている破綻国家であるとの前提であるとしたうえで、今回政府は「始めに自衛隊の派遣ありき」という発想ではなかったかと疑問を投げかけた。
平岡議員は、ソマリア沖で自衛隊が武力紛争に巻き込まれる可能性として、ソマリア沖の海賊は内戦状態のなかでは「国に準ずる組織」か否かの判断が難しく、憲法9条が禁じている「国に準ずる組織」への「武力の行使」、「武力による威嚇」と評価される可能性を指摘。中曽根外務大臣は、「国に準ずる組織」は国際法上存在しない概念であり、評価できないとして「私人の犯罪行為だとみる」と答弁、それを受けて平岡議員は、「無責任な派遣だといわざるを得ない」と断じた。
平岡議員はまた、ソマリア沖への派遣は、1954年6月2日の参議院の決議「自衛隊の海外出動をなさざることに関する決議」に反しているのではないかと指摘。平岡議員は当時の宮沢首相が「決議の有権解釈は参議院にある」と答弁していることにふれ、「参議院が有権解釈したら政府はそれに従うのか」と詰め寄ったが、麻生首相は「憲法違反につながるとは考えない」と答弁した。
続いて質問に立った長島昭久議員は、海上交通の安全は死活的な国益であり、国益を犯されることがあれば海上保安庁で対応できないときは海上自衛隊の出動もやむなし、との立場を明確にしたうえで、実力部隊運用にかかる国会の関与は、活動の性格によって変わってくるとの考えを明示。(1)武力行使、武器の使用との近接性、(2)国民の権利義務を制約する可能性、(3)決定にあたっての迅速性――の観点から判断してきたこれまでの経緯にも言及し、議員修正によって国会承認が付け加えられてきたとして、より良い法案をつくり、自衛隊を送っていける枠組みつくるべきだと柔軟な対応を求めた。
長島議員はまた、海賊行為への対処において、その一連のプロセスのなかで海賊船の疑いのある船舶に出くわし、合理的な疑いあるとして呼びかけ、警告射撃、停戦命令、立ち入り検査を行った場合に、結果として海賊でなかった場合にも憲法9条違反にはならないのかを質問。
宮崎内閣法制局長、麻生首相ともに、合理的に判断して海賊行為だとしたみなした場合、憲法違反になることはないと明言した。
質疑後、同法案は与党の賛成多数で可決した。自衛隊派遣に国会の事前承認を義務付けるなどの修正案を提出したが、否決された。
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