党水俣病対策作業チームは29〜30日の2日間、5月1日の水俣病犠牲者慰霊式を前に、水俣市入りし、民主党の「水俣病被害の救済に関する特別措置法案」(4月17日に参議院に提出・下記関連記事参照)の内容を水俣病患者・被害者らに説明するとともに意見交換を行った。
今回の視察には、岡崎トミ子『次の内閣』ネクスト環境大臣、福山哲郎政調会長代理、松野信夫水俣病作業チーム座長、大島九州男同事務局長、轟木利治同事務局次長、鹿児島県連代表の川内博史衆議院議員ほか、党熊本県連、党鹿児島県連の地方議員らが参加した。
29日に現地入りした一行はまず、胎児性・小児性患者らが通う社会福祉法人さかえの杜「ほっとはうす」を訪れ、通所者や常務理事で施設長の加藤タケ子氏などと面談した。意見交換を通じては、水俣病がまだ決して終わっていないこと、それまでは何とか歩行が可能であった患者さん多くが30代になってから車いすが必要になるなど、年齢が進むにつれて症状が進む実態、患者が地域で暮らせる支援の必要性、与党案に含まれる加害企業チッソの分社化への強い抵抗感など――を感じることができた。
その後、水俣市立水俣病資料館を訪れ、館長の案内で展示施設等を視察し、水俣病患者・被害者11団体らと救済案や今後の対応等についての意見交換を行った。
意見交換ではまず視察団から民主党案に関して、先に衆議院に出された与党案と違って2004年の最高裁判決を尊重し、すべての被害者を救済することを目指して対象範囲を広げていること、分社化や公健法の地域指定解除を含まないことなど、その内容を説明した。
11団体からは救済範囲の広さなどから民主党案を支持する意見や、与党案に含まれるチッソの分社化案を批判する意見が出された一方、早期に結論を出すため、与党案に歩み寄ることを求める意見も出されるなど、異なる立場から異なる意見が出され、水俣病問題の複雑さ、解決の困難さがあらためて浮き彫りになった。
次に、水俣病公式確認第1号となった姉妹の自宅を訪問。本人に直接面会するとともに、24時間体制で見守っている姉夫妻の話を聞き、解決への決意を新たにした。
翌30日には水俣市議会を訪れ、宮本勝彬市長や、水俣市議らとの面談。宮本市長は、「何としても早期に結論を出して欲しい」と述べ、地域指定廃止の懸念、チッソが水俣に残る保証や地域振興の必要性、差別を恐れるなどして未だに名乗り出ることができない患者・被害者への配慮の重要性が指摘された。
水俣市議からは、早期解決を求める声や、広範な患者・被害者の救済が必要との認識や、分社化への懸念を示す意見が多く、チッソが地域経済に果たす大きな役割への配慮も求められた。また、商工会議所から、分社化も含むチッソへの支援などを内容とする要望書を受け取った。
その後は、熊本学園大学水俣学現地研究センターを訪れ、花田昌宣教授と面会。被害者救済にあたって何が必要かについて花田教授は、「被害者の権利保障をベースとすべきだ」と提議。また、民主党案に対しては、「基本的な方向性については賛意だ。胎児性患者に対する配慮、将来にわたって救済の門戸を広げてほしい」と指摘した。
また、熊本県議会の水俣病対策特別委員会のメンバー、蒲島郁夫熊本県知事らともそれぞれ面会した。特別委員会のメンバーからは、実効ある救済策と県財政への配慮が求められ、今国会中に法案成立を実現することが求められた。蒲島知事からは、困難な問題だが解決の機は熟しているとして、今国会中に与野党の協議をまとめて法案を成立させることが求められた。
視察を終えた一行は県政クラブで記者会見を行い、その中で松野座長は、「あらためて被害者の全員救済を目指すことの必要性を痛感した。民主党案と与党案には内容に大きな違いがあり困難ではあるが、何とか与野党で合意して早期解決を目指していきたい」と決意を表明した。
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