前原誠司副代表は7日午後、衆議院予算委員会で菅直人代表代行に続いて質問に立ち、新たな経済対策の内容について日本の弱点を克服するものになっていないと指摘。医療と介護問題を中心に麻生政権の見解を質した。
前原副代表ははじめに、日本のGDPが激しく落ち込むなか、ある程度財政出動してGDPギャップを埋めることは必要であると主張。補正予算の量的な部分については一定の理解を示したうえで、その具体的内容について疑問を投げかけた。
前原副代表は、日本の主な制約要因は、莫大な財政赤字、人口減少、少子高齢化、「百年に一度」の津波だと分析。この未曾有の不況を克服ための主な方針として、(1)財政出動を含む、あらゆる政策の動員(時限的)、(2)医療・介護・食料・環境・省エネ・教育・先端技術などバラマキではない投資分野の戦略化(弱点克服、長所強化)、(3)弛まぬ行財政改革の努力、(4)官製不況の克服、成長産業の育成、選別された規制緩和など政調戦略の具現化――の4つの柱を列挙した。
特に、弛まぬ行財政改革として、基礎自治体への権限・財源の移譲、天下りの受け皿となる公益法人のゼロベースの見直し、公共事業の見直し(特に道路、河川)が必要だと強調。麻生政権が掲げる新たな経済対策には哲学がないと批判した。
具体的には、社会保障の重要性を主張、医療崩壊・介護崩壊といった日本の弱点が全く克服されていないとした。東京・愛育病院への労働基準監督署の是正勧告、奈良県立奈良病院の産婦人科医2人への司法判断を一例として、四六時中運ばれてくる急患を診ているにも係らず、「定時の見回り程度の仕事で睡眠もとれる」とする宿直扱いにされ、本来支払われるべき残業代、超過勤務手当が支払われていない過酷な勤務実態を紹介。麻生首相は、「勤務医、看護師の仕事のつらさは認識している」と述べ、今回90億円超の財政支援を行うとともに、これまでサービス残業させてきたことに対して「是正されるべき」と明言した。
前原副代表は、麻生首相の「超勤手当を出す」との発言を評価する一方、超勤手当が払われてもその過酷な労働実態が改善されないとして、医師、看護師不足対策の必要性を指摘。麻生首相は、今回の補正予算で地域医療再生基金として3000億円超を設けていると強弁したが、前原副代表は、基金を積んだからといって都道府県に任せ切りでは改善にはならないと反論、どの期間で3100億円に応じた医師不足が是正されるのか、国として地方が実行計画をきちんと進められているのかチェックすることが必要だと述べた。
前原副代表はさらに、自治体財政健全化法と公立病院の現状について言及、茨城県の筑西病院を例に挙げ、公立病院の経営状況が悪化したことにより、その患者が栃木県内の救命救急センターの医療機関に流れ、その負担のしわ寄せが行くという悪循環が生まれるとへの懸念を示した。自治体に病院が少なく、そこしかないような過疎地域において病院経営を自治体財政健全化法に含むべきではないとして、公立病院の今後のあり方について問題提起した。
前原副代表は、介護報酬の問題にも触れ、何故3年限定の給料アップなのかとその根拠を質した。麻生首相は、「もっともな指摘」と応じ、今後介護保険制度を含めいろいろ検討したうえで平成24年度以上については見極めるとした。
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