参議院予算委員会で21日午後、09年度補正予算案の基本的質疑が引き続き行われ、民主党・新緑風会・国民新・日本の田中康夫議員が「真にワイズ・スペンディングな補正予算」かとの観点から、関係大臣らの認識を質した。
田中議員は冒頭、補正予算案について「GDP比3%の15兆円規模ありきで積み上げられた、従来型発想の追加経済対策が今回の補正予算だ」としたうえで、「ワイズ・スペンディングだといかに強弁しようとも、政権与党の総選挙前の悪あがき、バラマキ予算であることは火を見るよりも明らか」だと批判した。
そのうえで田中議員は、政府が「ワイズ・スペンディング」という言葉を繰り返し発言し、昨日の同予算委員会においても「ひとつひとつ検証すればきちんと理由と目的がある」と語っている点を取り上げ、しかし、5月11日の財務省主計局長の答弁において「今回は当初予算と違って概算の要求書は存在しないし、書類もない。財務省は調整は行っても査定は行わない」と述べている点を問題視。この発言を与謝野財務大臣に改めて確認した。
与謝野財務相は、今回の手順は3月13日に与党に対して新たな経済情勢の変化に対応するよう首相から指示が出され、検討が開始されたと説明。同時に官邸では有識者会合が開かれ、景気の悪化への対応について意見が集められ、その後3月31日に政府・与党に対して経済危機を乗り切るために包括的な経済危機対策を早急に策定るよう答申が出され、それを受けて政府・与党内で検討し、4月10日に経済危機対策を策定してこれを踏まえて補正予算案が組まれたなどと説明。「地方に関しては地方がなるべく自由に自分の判断でお金が使えるようにというのは、20年度の2次補正のときからの考え方で、その考えは継承されている」などと強弁した。
そうした答弁を受けて田中議員は、「惻隠の情で前向きの議論をしたい」と温情を示しつつも、「すなわち概算要求なし、書類なし、査定なし。これは逆に考えれば、まさに補正予算というものは政治のリーダーシップにおいて、トップダウン型で的確な、明確な認識を示して組むものが補正予算なのかと思う」と分析。「しかし残念ながらその形にはなっていない」と断じ、まさに振り分け型で、各省庁へのバイキング方式で配られることになった結果、5兆円近い基金に各省庁が逃げ込む結果となっているとの見方を示した。
田中議員はさらに、国の将来を見据えた教育予算を継続的に拡充していくべきだと問題提起するとともに、「ちまちましたお金ではなくてもできることがある」として、大きな郊外型店舗に並ぶ冷凍パンにおされて街のパン屋さんによって育まれてきた食文化が失われることがないよう、英知を結集してつくられたフランスの法律を紹介。パン屋の条件として「自分で選んだ原料、自分でこねた生地、自分で焼いたパン、このことをその場で行う」との一文を加えられたことを紹介した田中議員は、「不透明な予算をつけることでなく、まさにたった一行の文章が法律に加えられることでまっとうな営みをする人をきちんと評価する。これこそが究極の政治や行政のあり方だ」と指摘した。
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