社会資本整備担当ネクスト大臣
前原誠司
徳山ダムは、@利水、A発電、B治水の三つを主な目的とする多目的ダムである。今回の現地視察調査では、この三つの目的について一つひとつ検証を行い、以下の結論に達した。
【利水について】
公団の計画では、徳山ダムの利水計画は水道用水が愛知県に4 トン/秒、名古屋に2ン/秒、岐阜県に1.5 トン/秒、工業用水が岐阜に3.5 トン/秒、名古屋に1 トン/秒となっている。しかし、「長良川河口堰に関する民主党方針」の項でも述べたように愛知県側については「水余り」が指摘されている。また、岐阜県では77 年に完成した岩屋ダムの水利権を工業用水として4.33 トン/秒、水道水として1.77 トン/秒買っているが、工業用水については0.18 トン/秒しか使われておらず、水道用水も65%程度の利用量である(平成11 年度実績)。このような状況下で新たな利水用のダム建設が本当に必要なのか大いに疑問である。
さらに徳山ダムの水を導水するためには新たな導水施設が必要だが、具体的な水需要計画がないなかで巨額の導水事業を行うことは無駄な投資と言わざるをえない。
【発電について】
発電事業は電源開発株式会社が行うこととなっているが、ダム建設事業費(2540 億円)が今後さらに膨らむことは疑いようもなく、それに併せて同社の投資コストは巨額なものとなるため、電力料金が高価なものとなるのは必至の情勢。電力需要が頭打ちの状況下で割高の電力をつくるということ自体、今日の電力の自由化という流れに逆行するものであり、同ダム事業の発電目的の合理性は極めて薄い。
【治水について】
徳山ダム事業は事業主体が水資源開発公団であることからもわかるように、もともと利水が主目的のダムであるが、公団の説明資料ではまず「治水」が第一のように述べられている。これまでも多くの大規模公共事業が「国民の生命・財産を守る」という誰にも反対できない理由を前面に出すことで推し進められたきたが、どのような手法が「国民の生命・財産を守る」上で最善の方法であるのかは、改めて検討する必要がある。
ダムを使った流量カットによる洪水対策については、降雨ピーク時の降水量の正確な予測や下流の横山ダムとの統合運用という技術上の問題もあることから、洪水調整の実効性確保にはなお疑問が残る。
以上あげた点のほかにも、ダム建設はクマタカやイヌワシなどの絶滅危惧種に深刻な影響を与える可能性が高く、自然生態系の保全の観点からも再検討が必要と思われる。
このように様々な点で徳山ダム事業建設には疑問な点が多いことから、民主党としては同事業をいったん凍結し、利水、発電、治水、環境、財政等の観点から再度慎重に検討すべきであると考える。特に治水対策については、ダムによる治水という発想が世界的に見直されつつある現状に鑑み、森林保全による山の保水力の充実や堤防強化、河川の浚渫や遊水池の確保など多くの方法を組み合わせたスタイルを検討し、もっとも効果的かつ自然環境との共生に配慮した対策を確立すべきと考える。
以上
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