参議院比例区への非拘束名簿方式導入などを盛り込んだ公職選挙法改正案が、26日の衆議院本会議で、民主党など野党の反対にも関わらず、与党の賛成多数で可決・成立した。
法案の採決に先立ち、民主党など野党4会派は、25日の衆院倫理・選挙特別委員会で正常な採決が行われなかったことに野党が抗議を続けているにも関わらず、同日夜の衆院議院運営委員会で、強引に26日の本会議日程を与党のみの賛成で設定したことについて、「慎重かつ公正な運営が保たれない」として、藤井孝男衆院議運委員長の解任決議案を提出した。
本会議では、今田保典衆院議員(議運委理事)が登壇し、決議案の趣旨説明を行った。(写真上)
今田議員は、公選法改正案の強引な扱いに対して「国民の参政権にかかわり、議会制民主主義の根幹にも関わる極めて重要な法案に関してのこのような態度は議運委員長の重い職責に全く背くもの」と藤井委員長を強く批判。また与野党で合意した重要法案の審議の進め方を無視して、一方的に与党単独で本会議質疑や委員会付託を強行したことを「過去これほど多くの法案についてこれほど強引な議院運営を行った委員長が存在しただろうか。信じがたい暴挙の積み重ねだ」と厳しく叱責した。その後、記名採決が行われたが、野党の賛成少数で決議案は否決された。
次に、公選法改正案が議題になり、委員長報告に続いて、民主党の佐藤観樹衆院議員が法案に反対の立場から討論に立った。(写真下)
佐藤議員は、これまで長い議員生活で衆参の定数是正や衆議院・参議院の選挙制度改革などに関与してきた経験を振り返って、「今回の非拘束名簿式への改正は、与党3党の断末魔のあがきとしか見えない。選挙制度を変えないと勝てないのか。このような強引な政治手法を続けるなら、政治は国民からますます離れ、与党3党は墓穴を掘っていく」と冒頭に強調した。
反対理由としてまず佐藤議員は、与野党で積み上げてきた合意を無視して、強引な法案提出、議会運営を重ねてきた与党の姿勢そのものにあると指摘。一連のやり方について「言論の府たる国会、議会制民主主義を冒涜、破壊するものだ」と非難した。また非拘束比例制が悪評の高かったかつての全国区選挙の再来であることも理由としてあげ、「同じ党内の候補者よりも1票でも多く取るように、金をかけ、業界・企業・役所を補助金をエサに締め上げ、自民党名簿にある候補者の票獲得にはっぱをかける選挙になる。むしろそのために制度を変えるのではないか」と述べた。さらに3つ目の理由として、いわゆる批判の強い「票の横流し」を上げ、「結果として、得票の少ない候補者が得票の多い候補者から票のお裾分けにあずかる仕組み。顔が全く見えなかった候補者でも、国民が選ばなかった候補者でも、おこぼれの結果で議席を得るという詐欺まがいのことが起こりうる」と、制度の致命的欠陥をあげた。
これらの問題点を指摘した上で、佐藤議員は、「国民はこの与党案の欺瞞を見抜けぬほど愚かではない」と述べ、民主党が来年の参議院選で勝利して日本の民主主義を守り、発展させることを表明して、討論を終えた。
与野党の討論を終え、再び記名採決が行われた結果、民主党・無所属クラブ、自由党、共産党、社民党、無所属の3名の反対190票、与党などの賛成274票で、法案は可決、成立した。
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