9日、衆議院の武力攻撃事態対処特別委員会において、民主党の渡辺周議員は「武力攻撃のおそれのある場合」と「予測されるに至った事態」とがわかりにくいと指摘。98年に起きた北朝鮮のテポドン発射を例に、「この客観的事実をもってすれば『予測』なのか『おそれ』なのか」と、具体的内容の説明を求めた。
中谷防衛庁長官は「そのときの国際情勢と具体的事象をふまえて判断する。一概に今の時点では言えない」などと、抽象的な答弁に終始。さらに「当時の政府は、当事国がわが国を武力攻撃する意志と能力はあるか、日本を直接の標的にしたかどうかを総合的に判断し、武力攻撃の予測される事態ではないと判断したものと思われる」などとした。
渡辺議員は当事国の意図がわからず、日本にミサイルが向かっているという場合は「予測」か「おそれ」かと重ねて質したが、中谷長官は「仮定の話には応えられない」とし、客観的な情勢に基づいて判断するとの答弁にとどまった。渡辺議員は「予測」「おそれ」の明示の必要性を指摘し、理事会での対応を委員長に求めた。
続いて渡辺議員は、「武力」の定義を質し、米国同時多発テロで使われた旅客機は武力か、と質問。中谷長官は「武力となり得る」とし、同様の事態が日本で起きた場合は武力攻撃事態に該当することもあり得ると説明した。渡辺議員はさらに踏み込んで、テロリストに乗っ取られた航空機が自爆目的で飛行しているとき、突入直前に撃墜するか否かの判断を、誰がどのような情報をもとに下すのか、と質問。福田官房長官は「法律の範囲内でできる限りの措置をとる。仮定の話なので判断するのはむずかしい」とするにとどまった。渡辺議員は「武力攻撃事態に該当することもあり得るとしたからには、撃墜することもあり得るはず」と指摘し、当然検討しておくべき事項だとクギをさした。
また渡辺議員は、武力攻撃事態の認定後の国民への公布について質問。福田官房長官は、緊急度によって記者会見の場合もあるし、官報等で公示することもある、などと悠長な答弁。渡辺議員は「一種の非常事態であるからには、すみやかに、あらゆるメディアを使って公示しなければならないはず」と指摘し、具体的な対処内容が何ら検討されていない実状を批判した。
さらに、地方公共団体の責務および国と地方公共団体との役割分担についても質問。片山総務相は「まだ具体的な役割が想定されていない。想定されてから予算措置や体制がどうなるか明らかになる。十分に協議していく」とするにとどまった。渡辺議員は民間防衛など具体的イメージがつかみにくいとし、言葉での定義だけではなく速やかな国民への周知を求めた。
最後に渡辺議員は、安全保障会議の位置づけをめぐって「今まで審議機関であったが、性格が変化し、実際の指揮運用機能を有する機関となる」との見方を示した上で、その人選も討議内容も計画も知らされないのは戦前の枢密院のような存在になるおそれがあると分析。再考の必要性を指摘した。
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