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2002/05/09
【衆院事態特】桑原議員、有事法制と憲法の関係など質す
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 9日、衆議院の武力攻撃事態対処特別委員会で、民主党の桑原豊議員が質問に立ち、武力攻撃事態法と憲法の関係など、政府の有事法制関連法案の基本問題について質した。

 質問の冒頭、桑原議員は、中国・瀋陽の日本総領事館に対する中国警官の侵入事件について触れ、政府の対応を質した。川口外相は、在外公館への現地国官吏の許可なき立ち入りを禁止したウィーン条約に違反するとして中国政府に抗議し、事態の詳細な説明を求めたことを明らかにするとともに、亡命を求めて総領事館内で拘束された北朝鮮住民2人については、身柄の引き渡しを求めていく意向を示した。

 桑原議員はまず、小泉首相が有事法制について「備えあれば憂いなし」と発言していることを取り上げ、「現行憲法にも備えはある」と反論。基本的人権の尊重、平和主義、国際協調といった諸原理の実現によって有事を起こさせないというのが憲法の有事に対する考え方だ、とする見解を述べた。

 その上で、武力攻撃事態法案の第3条(武力攻撃事態への対処に関する基本理念)において武力攻撃の発生の回避が盛り込まれたことの意味は大きいと指摘し、回避のための具体的な手段を質した。福田官房長官は、外交交渉や国際社会への働きかけなどを一般的に挙げつつ、具体的には今後検討していくとした。

 続いて桑原議員は、有事における基本的人権の制約をめぐって質問。同法案第3条で国民の自由と権利の制限を包括的に規定しているのは憲法違反にあたるのではないか、と質した。福田官房長官は、制限を加えることが趣旨ではないとし、有事においても、集会や報道の自由など国民の権利は公共の福祉に反しない限り確保される、と述べた。

 これに対して桑原議員は「公共の福祉というのは抽象的だ。基本的人権は有事下でも何の変わりもなく守られるのではないか」と詰め寄った。津野内閣法制局長官は、有事でも基本権が尊重されねばならないのは当然だとしながらも、「権利の制約の範囲は一般的には言えない」と答えた。桑原議員は「どう考えても、有事における人権制限がまだまだ課せられてくる」と批判した。

 国と地方公共団体との役割分担をめぐっては、地方公共団体が対処措置を行わなかった場合の代執行を国に認めているのは地方自治法に抵触するのではないか、と質問。片山総務相は「特定の場合に限って、法律にしっかり書いて行うのだから抵触しない」としたが、桑原議員は、国による代執行の要件規定が地方自治法のそれよりも拡大されていることを指摘し、「悪用されることが心配だ。有事における国と地方公共団体との役割分担は地方自治法でも対応できる」と述べた。

 また、周辺事態法に規定されている「周辺事態」と武力攻撃事態法案における「武力攻撃が予測されるに至った事態」(予測事態)との併存状態への対処をめぐっても質問。周辺事態下で米軍支援に出動した日本の艦船に攻撃が加えられた場合を想定し、周辺事態法に基づけば退避することになるが、予測事態ととらえれば対応が変わってくるのか、と質した。中谷防衛長官は、その場合は、周辺事態法による対処が基本となるとの見解を示した。

 さらに、武力攻撃事態の際に自衛隊と共同で対処にあたる駐留米軍の法的身分についても質問。米軍は日米地位協定によって国内法の尊重義務を負っているが、実際に国内法を犯した場合はどうなるのか、と質した。川口外相は「尊重するのが前提」としか答えられず、内閣法制局長官は「法が適用されるわけではないので、違反もありえない」とした。桑原議員は「地位協定は主に平時段階を対象にしたもの。有事の時の取り決めは考えているのか」と追及したが、外相は今後検討すると答えるにとどまった。

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