2010/02/09
「子どもの貧困:中学・高校生の卒業クライシス(危機)について」ヒアリング
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国会内で9日昼、「ヒアリング 子どもの貧困:中学・高校生の卒業クライシス(危機)について」と題して、大阪府立春日丘高校と埼玉県立高校の定時制で学ぶ女子高校生4人と、窮状を間近で見ている2人の先生(大阪府立春日丘高校定時制教師の小西順治先生、埼玉県立高校定時制教師の鈴木敏則先生)、あしなが育英会の大学奨学生の森本早紀さんから、子どもたちを取り巻く現状について、約1時間30分にわたって民主党議員が話を聞いた。
経済的理由で学費を納付できない高校生が増加し、昨今の厳しい就職状況と合わせて「この年度末は卒業クライシスが訪れる」との指摘がある。自分自身のことや周囲の友だちや生徒のことを語ってくれたそれぞれの話からは、働かないと生活できないために退学せざるを得ない、生活困窮による授業料滞納のため卒業できない、経済的理由で進学をあきらめる、交通費が払えずに通学できない、給食費・修学旅行費が払えない、生活のために非正規雇用の厳しい労働条件下で働き続けて体調を悪化させる、家計負担が少ない定時制高校の志望者が増えて希望しても入れない、といった、子どもたちの暮らしを崩壊させ、学ぶ機会を奪う貧困の連鎖の実態が浮き彫りになった。
衆議院予算委員会の審議を終えて駆けつけた長妻昭厚生労働大臣、山井和則厚生労働大臣政務官、高井美穂文部科学大臣政務官に対し、こうした中・高校生の現状を救うために緊急対策を講じるよう、高校生有志・「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク準備会からとして、緊急要望書(下記ダウンロード参照)が手渡された。
「日々、いのちを守る政治を実践してくれて深く感謝する」と冒頭で記された要望書では、鳩山政権が2010年度から実施する高校授業料の実質無償化について、多くの生活苦に喘ぐ子どもたちに学ぶ権利の保障を進めるものとして評価した。
そのうえで、この制度が開始される前段として、現時点で決して少なくない子どもたちが経済的な理由による学費滞納で出席停止処分を受ける、卒業証書を渡してもらえないという危機に直面していると改めて指摘。きびしい雇用情勢下、中退扱いとなってしまった場合の将来の苦労は容易に想像できるとして、当面の緊急要望として、「文部科学省・厚生労働省が連携して、都道府県の教育委員会、公立・私立の高等学校、授業料を滞納している高校生とその保護者に対して、授業料減免・奨学金・公的貸付などの既存施策の活用をきめ細かく周知し促し、また必要に応じて施策を改善・創設して、今年度末に経済的理由による学費滞納によって卒業させられない高校生が一人も生まれないようにしてください」と要請した(動画は以下関連記事参照)。
それを受けて長妻大臣は「ずっと仲間といっしょに勉強してきたのに、卒業式に出席できないということが日本で起こってはならない」と表明。国民の皆さんの大きなお力を得て政権交代を成し遂げた結果、来年度からは高校授業料の実質無償化が実現することを改めて説明し、「あくまで一歩だが踏み出すことになる」と語ったうえで、現状に対する喫緊の課題にも取り組んでいくべく、関係部局で検討を重ねてきたことを明かした。
「前向きに実施したいこと」として、長妻大臣は都道府県の福祉協議会が行う既存の融資である「生活福祉資金貸付け事業」を活用して、未納の授業料の支払にあてられないか、特例を講じるべく実現に向けて取り組んでいると表明。中長期的には、諸外国と比べて遅れている子どもたちの貧困問題の解決に向け、「予算の配分を変えて取り組みたい」と強調した。
高井文部科学大臣政務官は「しっかりと皆さんの要望を受け取らせていただいた」と語り、授業料減免、奨学金・公的貸付などの実施に向け、既存の制度を使い勝手のいいように改めていく考えを示した。「文部科学省としては教育関係者に即通達を出し、できるだけ迅速に、広く周知して、皆さんのところに届くように情報を提供していく」とした。
同時に「貧困対策は政府一丸となって取り組むべき課題」だとの認識を改めて示し、子どもたちの目の前の現状への対応だけでなく、保護者の就業支援、子ども自身の就業支援、生活支援のあり方等、連携する形で貧困から抜け出すための対策を講じていくとした。
なお、司会は中根やすひろ衆議院議員が務めた。
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