国会内で1日午後、衆議院予算委員会で集中審議が行われ、民主党・無所属クラブの海江田万里議員が質問に立ち、政権交代の意味するところ、予備費や仮配分等について鳩山由紀夫総理、平野博文官房長官らに質した。
海江田議員はまだ予算が成立していないので実感が薄いが、鳩山政権の誕生によって国民生活にこれまでと違う大転換があったと思っていると指摘。その一例として2月24日に同委員会公聴会に公述人として出席した高橋伸彰・立命館大学教授が政府発表の月例経済報告を取り上げたことに言及。政権交代直前は「景気は失業率が過去最高水準になるなど、厳しい状況にあるものの、このところ持ち直しの動きが見られる」と総括的な表現であったものが、政権交代直後には「景気は持ち直してきているが、自立性に乏しく、失業率が高水準にあるなど、依然として厳しい状況にある」と指摘している点を取り上げた。海江田議員は「ここに大きな発想の転換、視点の転換がある」と説明し、景気は大企業の生産動向に左右されるが、「しかし、大切なのは国民の生活の視点である」と問題提起し、そこを後押ししていく視点が政治には不可欠であると改めて指摘。それに対して鳩山総理も「まったくその通り。企業も大事だが、国民の視点に立つことが新しい政権にとって最も大事」との考えを示した。
同時に、予算に盛り込まれている、経済危機対応及び地域活性化予備費として計上されている1兆円について取り上げ、本来であれば予備費ではなくできるだけ使う項目を決めて計上するのが筋ではないかと提起した。鳩山総理も海江田議員の指摘に同意したうえで、経済危機対応・地域活性化を慮る上でリーマンショック以降の日本経済の先が見えないで二番底への恐れがある状況に臨機応変に対応するなか、予備費を使うことになるとした。
続いて海江田議員は仮配分に関して「私はあくまでも仮置きの数字だと思っている」として、事実関係の説明を求めた。
平野博文官房長官は事実確認を経て得た以下の情報を報告した。(1)公共事業に関わる直轄負担金に関する見直し等を進めていくなかで、事業費の一部を負担する地方公共団体との意思疎通を図るとともに、事業に関する透明性の向上を図る観点から国土交通省では予算成立後に予定されている箇所付けに向けて、昨年11月には都道府県に通知した事業計画を全面的に公表するなど、各種の新たな取り組みが実施されてきた。今回の事案はそうした取り組みを進めようとするなかで成立した問題である。(2)時系列で見ていくと、国土交通省の政務三役の合意のもとに、昨年12月16日から18日にかけて、大臣・政務官が出席し、所管公共事業等に関する民主党都道府県連からの要望のヒアリングが実施され、担当課長等が同席した。その後、予算成立後に決定される箇所づけに向けて、新しい取組みとして地方公共団体と調整等を行うための途中段階の幅を持った数値を仮配分として示すべく国土交通省において準備が進められていた。民主党側から平成22年度に向けた検討状況について教えてほしいという要請があり、中間的な状況説明を行うことになった――と平野長官は語った。
「この民主党の説明のあと、民主党県連を通じて地方公共団体等に当該な情報が提供され、各所で報道されるという事態が結果的には起こった」と重ねて述べた平野長官は、一連の報道のなかで馬淵澄夫国土交通副大臣が「予算審議の前に県連や自治体に明らかにされるのは画期的」と発言したとの記事に関しては、「これまでの予算審議終了後の3月末に公表されてきた事業箇所ごとの事業評価の評価結果を前倒しして公表し、予算の審議に資するようにすることが重要」との主旨を副大臣は昨年の10月から12月の間に数次にわたって記者会見で述べていたことが確認できたと平野長官は説明。しかしながら、馬淵副大臣が箇所づけや仮配分が予算審議前に明らかになることが画期的と述べた事実は認められず、副大臣本人からも「そうした発言はしていない」との確認も得たとした。
さらに、一連の事実関係について、同委員会の質疑において、秘密を守る義務を定める大臣規範、憲法第15条第2項で政治的中立性が求められる公務員との関係を定める大臣等の規範に抵触するのではないかとの指摘に関して議論され、その点を精査したことを平野長官は説明。その結果、抵触しないことが解明されたことを明かした。
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