参院予算委員会で、公聴会が16日開かれ、民主党・新緑風会・国民新・日本から、大島九州男、牧山ひろえ、下田敦子各議員が質問に立った。
午前は、財政・経済をテーマに、榊原英資早稲田大学教授、小川紘一東京大学総括プロジェクト機構・知的資産経営・総括寄付講座特任教授の二人が公述人として意見を表明した。
表明に対して大島議員は、モノづくり面で、日本の中小企業が国際競争で勝つにはどのような、理念が必要か、また、子育て、医療、教育分野に投資することの意味を両教授に質した。
榊原教授は、国債が国内で消化されている間は、国民から見てそれは資産であり、国全体で見れば、後4、5年はバランスが取れており本年度はもっと国債を発行し、例えば子ども手当を満額の2万6000円にしても良かったのではないかとの見解を示した。そのうえで、国債を管理することは必要であり、公共事業はやりすぎたのではないか、フランスのように、子育て支援を充実させ、出生率を上げ、人口を増やすことが最も有効な成長戦略であるとの見解を示した。
小川教授は、中小企業は親企業を頼りにするのではなく、国際的分業、オープン化を前提に自立していくことが大切であるとして、「インド、中国、ベトナムなどでは、日本の製造業に尊敬の念を払っている、文化といってもいい。この文化とリンクすることが必要」との見解を示した。
午後、外交・安全保障をテーマに白石隆内閣府科学技術会議議員が、日米安保は日米のならず東南アジアにとっても公共財であるとしたうえで、東アジア共同体の進展を図るべきと公述、志方俊之帝京大学教授は、日本の防衛政策は砂上の楼閣でもなく、空中楼閣であり、憲法と自衛隊法しかなく、安全保障に関する基本法がない現状を批判した。
この見解に対して牧山議員は、ソフトパワーによる防衛という考えもあるのではないかと表明、日本が誇るアニメなどコンテンツ産業、さらには料理などを通してアジアとの関係を強化する、また、知的財産権の問題などの解決を図るべきではないかと質した。
白石議員は、むしろ日本が海外に出るよりも、日本にアジアからの留学生などを受け入れる方が20年後、30年後の安全保障につながる、インフラ整備に力を注ぐ方がいいのではないかとの見解を示した。
志方教授は、ソフトパワーで守ることはあるとしながらも、しかし、それだけでは守れない、有事におけるものとして軍事、ハードパワーを考えるべきだとした。
さらに、社会保障・国民生活をテーマに、山田昌弘中央大学教授、加藤篤司JA東京青壮年組織協議会顧問の二人が公述人として見解を表明した。
山田教授は、日本の社会保障制度の前提が今はもう崩れているとしたうえで、子ども手当による家庭収入の増は、15年前の収入水準に戻すことになる、再チャレンジできる、希望が持てるところに予算を付けるべきと主張した。
加藤顧問は、相続税などで東京では毎年120ヘクタール都市農地が減っており、また、草を食べる肉牛を開発しても、指定によって値段が下がる、さらには、市民農園などが規制によってなかなか増えない現状を訴え、正直者が馬鹿をみない、努力が報われるような社会をと訴えた。
これらの公述に対して、下田議員は、利益を追求しないことが日本では正しいこととまだ思われているが、ソーシャルビジネスとの考えで、介護・医療をとらえるべきでないかと質問した。山田教授は、最低限の保障は公的に行い、上乗せ部分はビジネスとして行うべきだとした。
また、下田議員は、農業にも経営学が必要ではとして見解を求めた。加藤顧問は、「農業は一人でやるものではない」として、農業技術、販売技術、経営学、先を見通す能力も必要だと答えた。
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