森首相の所信表明演説に対する代表質問が1日、参院本会議に舞台を移して行われた。民主党・新緑風会からは角田義一参議院幹事長、円より子参院国対委員長代理のふたりが質問に立った。
角田議員は、あっせん利得収賄罪法案の審議入り・成立を先送りする与党側の姿勢を「とうてい国民の理解は得られない」と批判。さらに、昨年野党として法案を提出した公明党や、かつて自由党として入札干渉罪法案を提出した保守党を、「自民党の先のばし方針に同調し、結果として国民に対する背信行為に荷担している」と厳しい言葉で攻撃した。
また角田議員は、久世前金融再生委員長の更迭問題で明るみにでた、自民党の参議院比例区名簿搭載をめぐる、関連業界と連携した党員確保の実態にふれ、「比例名簿の高順位を確保するため、関係業界に名簿提出を求めて党員とし、その党費を特定の業者に負担させる構造が明らかになった。自民党の金権体質が改めて問われる」と強い口調で批判した。これに対し、森首相は「党員の獲得数だけでなく、党活動への貢献度など総合的に勘案している。名簿搭載資格に厳正な基準を作り、公表している」などと反論した。
ついで、アメリカの本土ミサイル防衛(NMD)計画について、角田議員が「推移によっては深刻な軍拡につながりかねない問題」として政府の基本姿勢を正したのに対し、森首相は「わが国としても理解している」と述べ、従来の態度保留の姿勢から転換し、米国政府に理解を示す考えを表明した。
さらに、8月21日から東京で再会される朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)との国交正常化交渉について、角田議員は「関係改善のための3つの課題である、過去の清算問題、核・ミサイル問題、らち問題を含む人道的問題について、相互信頼の基礎に立って誠意を持って交渉に臨むべき」と求めた。
円より子議員は、男女共同参画社会の実現、金融・経済政策、指導者のあるべき姿の3点をテーマに質問した。冒頭で、沖縄で起きた米兵による少女わいせつ事件について、森首相が「政府がどうこう言う問題じゃない」と発言したり、沖縄サミットにG8各国の首脳夫人が参加しなかったことについて、「会議が開けないわけではない。ついてきてもらってホテルでぼけっとしてもらっても困る」などと述べたことを取り上げ、「女性蔑視を世界に発信していることになりはしないか」と批判。
さらに、円議員は逸失利益の男女差、無報酬労働の評価、就職時の性別や年齢差別などへの首相の考えをただしながら、「子供を育てやすい社会、年齢を重ねてもいつでも仕切り直しのできる社会づくりのためにも、差別を生む制度を見直し、男女共同参画社会の実現が必要」と主張した。
金融・経済政策では、「国民の実感は、政府見解のように景気の底打ち、プラス成長の順調な経済という情況にはない」として、国民に対して隠し立てのない情報公開と、不良債権処理で責任の所在を明確にするよう求めた。
最後に円議員は、森首相の使う「日本新生」の「新生」の言葉について、「時代のニーズに合わなくなって市場から退場していったタバコと同じ言葉、死語同然の言葉」と評し、「この国を本当に立ち直らせるお気持ちがあるなら、キーワード一つにも文体にも気を遣い、新鮮で力強い言葉を探しだして心を込めるべき」「国民に訴えかける言葉の選び方にあまりにも鈍感」と指摘し、質問を終えた。
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