参議院本会議で4日午後、民主党・新緑風会の舟山康江議員が代表質問に立ち、財政演説に対して菅直人総理に質した。
冒頭、舟山議員はCOP10について、「先進国と途上国との対立が顕在化するなか、最終盤までギリギリの調整が続き、議長である松本龍環境大臣自らが調整を行い、名古屋議定書と来年以降の新戦略計画(愛知目標)が採択された」と振り返り、その成果および今後の生物多様性の保全と維持可能な利用促進に向けた取組みを菅総理に質問した。
菅総理は「名古屋議定書と愛知目標が決定されたのは大変大きな成果だと喜んでいる」としたうえで、こうした方向の実現に向けて更なる努力をしていくとした。
続いて補正予算の目的及び効果に関連して、新成長戦略実現に向けた「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策」を踏まえ、来年から年明け以降の景気・雇用の悪化リスクに対し、需要面から先手を打つこととされている点を指摘。経済の安定運営には補正予算の速やかな成立と執行が求められているとの認識は与野党問わず共有するところだとの見方を示したうえで舟山議員は、審議に臨む総理の基本姿勢を質した。また、5兆円という規模について現在の経済状況に的確に答えられるかを質問。さらに今回の経済対策の実施により、どう内需が喚起され0.6%の経済効果をもたらすかなど、効果の説明を求めた。
審議に臨む基本姿勢に関連して菅総理は、経済対策に対する各党の提言を相当程度取り入れたと語ったうえで、現下のきびしい経済情勢下で一刻も早い成立が必要としたうえで、野党に対して十分な審議のうえですみやかにご賛同をお願いしたいとした。
同時に、デフレを脱却するにはまず需要の面での政策対応が必要ということは従来から変わっていないとの認識を示し、そこで3段構えの経済対策を策定し、雇用を基点として経済を大きくしていくという政策を実行していくことが重要だと表明。具体的には医療、介護、子育て、環境など、需要が見込める分野での雇用創出が必要だとし、林業・農業も含め、新たな雇用の広がりで失業率を下げ、賃金の引上げ、デフレ脱却へとつなぐ好循環を作り上げ、デフレ脱却から成長路線への軌道に乗せていくことを進めていくとした。
舟山議員はさらに、デフレ脱却への展望として、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への参加について取り上げ、基本的にあらゆる分野での市場開放を迫られるもので、すなわち「国のかたち」が大きく変わる恐れがあるとして、加盟にあたっては非関税障壁を含めたあらゆる分野への影響の十分な検討が必要だと指摘した。
同時に、「日本のGDPにおける第一次産業の割合は1.5%だ。1.5%を守るために98.5%のかなりの部分が犠牲になっているのではないか」との前原誠司外務大臣の発言に対し、国土保全や水源涵養、景観保持、農村社会の維持など多面的機能を果たしている農業の外部効果にも目を向ける必要があると問題提起。「多様性に配慮しながら各国の経済成長を持続させる」ことを目指すAPEC議長国の日本としては、この理念の実現に向け、アジア型ともいうべきモデルを積極的に世界に提唱していく必要があると語り、TPP参加を急ぐのではなく、国民生活への影響をしっかり議論して判断すべきだと強調した。
舟山議員は平成23年度予算編成の編成作業の進捗状況、また事業仕分けによって同予算編成への反映はどんな形で行われるべきかについて菅総理に質問した。
平成23年度予算編成について菅総理は、デフレ脱却と景気の自立的回復に向けた道筋を確かなものとするため、予備費、補正予算、当初予算と平成23年度までの政策展開を定めた3段構えの経済対策を切れ目なく実施することが重要だと答弁。同時に、来年度予算については新成長戦略を着実に実施し、企業が安心して投資と雇用に乗り出せる環境づくりを目指したいとして、「年内編成に向けて鋭意作業を進めていく」と語った。
菅総理は18の特別会計、51勘定について聖域なく洗い出すとともに特別会計の制度そのものについても検証を行ったと説明。「公開の場で一つひとつ検証したことで、行政の透明性が高まったことが最も重要」だとの認識を示し、仕分けの評価結果を踏まえて平成23年度予算に適切に反映していく考えを示した。
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