福島第1原発が立地する福島県双葉地方の町村長、町村議会議長が5日にそろって上京し、総理官邸で菅直人内閣総理大臣に緊急要望書を手渡した。
同地方町村会長を務める遠藤雄幸・川内村長は、「一刻も早く原発の状態を安定化してほしい。現状のままでは不明者の捜索やご遺体の収容もできず、さらには今後の生活や将来を見通せない。避難生活を続けていても光が見えない」と述べ、農業・漁業の被害への補償、特に牛の殺処分も視野に入れなければならなくなっている畜産農家などに対し国がバックアップすることや、原発から20キロ圏内避難住民の一時帰宅を認めるよう総理に求めた。
これに対し菅総理は、「想像する以上のご苦労をおかけしているが、東京電力はもとより、政府・自衛隊や消防が全力を挙げて、まずは原発の状態を一刻も早く安定させるために必死で作業に連日当たっている。この場でいつまでにどうなると申し上げられないのは残念だが、1日も早く『一つの山を超えた』と言える状況をまずはつくりたい。皆さまの『将来が見えない』という言葉は大変重い言葉だと思う。この大事故の補償などについて、東京電力がやれるところはもちろんやっていただくが、最終的には政府の責任でしっかり対応していくことを、この場でお約束する。一時帰宅については、どうやったら安全性が確保される中で皆さんのご希望に添えるか、鋭意検討している」と応えるとともに、「大変なご苦労をおかけしていることについて、心から政府の責任も含めておわび申し上げる。最終的に政府の責任でしっかりと応えていく」と重ねて表明した。
福島県双葉地方町村会、同町村議長会の「東日本大震災に関する緊急要望」の主な項目は次の通り。(1)福島第1原発事故の一刻も早い終息を図る(2)原子力災害に対する補償については国の責任で特別法を制定し全額補償する(3)避難期間の長期化が予想されることから生活の基盤である一時資金と衣食住の確保を早急に図る(4)避難区域内外の事業経営者支援及び就労者の雇用対策を早急に図る(5)避難している児童生徒等の就学先の確保に務める(6)避難先での高齢者等に対する医療福祉介護サービス等の確保に務める(7)被災地の治安に対する不安が高まるなかで防犯対策の強化に務める(8)大津波による行方不明者の捜索及び遺体の収容を早急に行う(9)放射線被害(風評被害を含む)に対しては直接間接を問わずすべて国家補償する(10)20キロメートル圏内避難住民の一時帰宅をできるようにする(11)通話(固定・携帯電話)不能地域の解消を図る(12)早急にインフラ整備を行う。
要望者は次の通り。【福島県双葉地方町村会】遠藤雄幸・川内村長=会長、井戸川克隆・双葉町長=副会長、草野孝・楢葉町長=理事、遠藤勝也・富岡町長=同、渡辺利綱・大熊町長=同、馬場有・浪江町長=同、山田基星・広野町長=監事、松本允秀・葛尾村長=同。【福島県双葉地方町村議会議長会】坂本紀一・広野町議会議長=会長、石田忠文・大熊町議会議長=副会長、松本幸英・楢葉町議会議長=理事、猪狩利衛・富岡町議会議長=同(代理参加)、松本政男・葛尾村議会議長=同、遠藤幸男・川内村議会議長=監事、清川泰弘・双葉町議会議長=同
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