参院予算委員会で答弁する菅総理
上から森、川上の2委員
|
参院予算委で1日、当面の震災復旧経費を盛り込んだ第1次補正予算の総括審議が行われた。民主党会派からは森ゆうこ委員、川上義博委員の2人が質問に立ち、菅直人総理大臣、野田佳彦財務大臣、木義明文部科学大臣、海江田万里経済産業大臣、松本龍環境大臣・防災担当大臣など関係閣僚や清水正孝・東京電力社長(参考人)の考えを質した。
両委員の主な質疑の概要は次の通り。
■学校の放射線安全基準
森委員 学校安全基準の20ミリシーベルトは、放射線管理区域の規制値の4倍。過去に5ミリの被曝で白血病になったケースが労災認定されたこともある。ただちに20ミリの学校安全基準を撤回して除染を行い、必要なら子どもたちの避難を支援すべきではないか。
高木文科相 子どもたちの健康や安全が何より重要だ。国際的基準や原子力安全委員会の助言を踏まえて、年間20ミリという基準を設定した。文科省では毎週モニタリングをしているが、2週間ごとに安全委に報告する。もし線量が比較的高い状態が続くなら、県と連絡を取って十分な対応を行わなくてはいけないと考えている。今後事態の変化があれば政府として最善の対応を行っていく。
菅総理 子どもたちが大人よりも放射線に敏感であることなども勘案したうえで、安全委から一定の助言をいただいた。20ミリの状態のまま被曝を受けていいという意味ではなく、これをいかに平常値に下げていくかという途中経過の基準値だと説明を受けている。除染等により放射線量を下げることで子どもたちの安全をしっかり守っていく。
■2010年の外部電源喪失事故
森委員 福島第1原発2号機では2010年6月にも外部電源が喪失、水位が2メートル低下する事故が起きており、外部電源喪失への対策の必要性は分かっていたはず。今回の事故は人災ではないか。
菅総理 もともと原発は外部電源が落ちても緊急のディーゼル発電機が起動して冷却機能が維持されることを前提としており、そのことがそうなっていなかったとすれば重大な示唆を与える事故だったと言えるので、森委員が言われるように、徹底的に究明しなければいけない。従来からの事故や指摘に対して対応ができていなかったことは認めざるを得ない。
■脱原発宣言とエネルギー政策転換
森委員 原発の安全というものは作られた神話だったのではないか。脱原発宣言するところから本当の復興が始まる。宣言したからといって明日からすべての原発を止めるわけにはいかないが、再生可能エネルギーなどに政策転換を図っていくべきではないか。
菅総理 今回の原発事故は極めて重大であり、その原因はこれから徹底的に究明しなくてはならない。わが国のエネルギー源は大きくは化石燃料、水力・太陽・風力などのクリーンなエネルギー、そして原子力の三つで進めて来た。これから先どういう方向で進むべきか、原子力の安全性についてシビアにチェックすると同時にクリーンエネルギーにもっと重点を置いて進めれば、グリーンイノベーションにもつながる。まずは原発事故の収束を図り、徹底した原因究明をするなかでエネルギー政策全体の中で議論していきたい。
松本環境相 環境省として太陽光などの再生可能エネルギー導入のポテンシャルを調べ4月21日に公表した。再生可能エネルギーは現在の技術水準を前提にしても理論上は原発の電力供給能力を上回るという試算結果となった。分散型で温暖化対策としても有効な再生可能エネルギーの導入を図っていくべきであり、普及に強力に取り組む。
■復興の議論をするのは早すぎないか
川上委員 いまだ1万人を超える行方不明者がおり、原発の収束の見通しもはっきりしていない。復興を考えることは必要だが、いまその議論を声高にやることは、被災者から見ると困惑するだけだ。復興の議論には住民の参加も必要だが地方選挙もできていない。
菅総理 私も被災の現地をいくつか訪れたが、石巻では、がれきの問題や打ち上げられた漁船の問題など復旧を急いでほしいという話と同時に水産業の復興にかかわる問題についてもぜひ急いでほしいという要望を強く受けた。決して復旧や捜索をおろそかにして次にいくということは許されないが、しっかり取り組みながら将来のビジョンを検討することは許されること。知事だけでなく商工会、農協などもそれを期待されている。
■復興財源のための増税論
川上委員 5年間など期限をつけて増税すべきというような議論があるが、デフレで大変なとき、大震災でさらなる負担に苦しんでいる国民に、いま負担しろというのは時間が逆ではないか。景気がよくなったときに考えるべきことであり、いまやる時期ではない。
菅総理 まず考えなければならないのは復興そのもの。どういう街、地域社会、産業を再生し、あるいは新規に作り出していくのかなどを含めて、ビジョンをきちんと打ち出していくことが大事だ。その中で相当程度の財源措置が必要になることは予想されるが、まず財源論ありき、財政論ありきではない。
■副首都機能の必要性
川上委員 東京に代替できるバックアップ機能を東京圏以外に設置すべきでないかという意見が超党派である。東京の首都機能をすべて移転するということではなく、いわば危機管理の中枢だけを有事の際はそちらで代替できる副首都機能の設置を議論しているが、賛同するか。
菅総理 私も今回の大震災直後に官邸の危機管理センターに入り指揮する中で、万一震災の影響で官邸も機能が失われたらどうするかということが一瞬頭に浮かんだ。東京の立川等にもいろいろ機能があるが、一緒に被災することもありうる。大きな地震があっても影響されない地域に中枢機能が途絶することなく代替できるということはしっかり考えておかなくてはいけない。
■東電社長の責任
川上委員 東電社長にはものすごく責任がある。日本は放射性物質を含んだ汚染水を初めて海に流した国になったし、今も高いレベルの放射性物質を放出し続けている等々の責任を深く感じなければいけない。
清水社長 低レベルの汚染水の放出は緊急避難とはいえ行き届かない部分があった。現在は事態の収束に向けて全力を挙げているが、経営的責任について、いずれは出処進退のけじめをつける。
|