民主党の両院議員総会が28日夕方、国会内の講堂で開かれた。総会に出席した菅直人総理(党代表)は、衆院本会議での内閣不信任決議案の採決を前にした代議士会での自らの発言の意図と現時点の考えについて、あらためて党所属衆参両院議員を前に説明した。菅総理の発言内容は次の通り。
今日はこの場所で6月2日に行われた代議士会の話を含めて、改めて両院総会という場でありますので、お話をさせていただきたいと思います。また同時にマスコミを通して国民の皆さんにも私の考え方をお伝えができればと思っております。
6月の2日、野党から衆議院に不信任案が提出される情勢の中で、民主党の衆議院議員からも賛同する動きが出てまいりました。賛同者が多数に上りますと、民主党が分裂状態となってしまう。その際は、私の内閣としても、事実上機能が低下をして、震災からの復興・復旧、そして原発事故に対する対応などが、しっかりと取り組めない状況になってしまうのではないかという心配を致しました。
その中で、私なりに熟慮をしたうえで、6月2日のこの場所での代議士会におきまして、「震災と原発事故について一定のめどがついた段階で若い世代に責任を引き継ぎたい。それまではしっかりとその二つの点についての責任を果たしていきたい」このように申し上げました。そして、出席された大半の衆議院議員の皆さんにご理解をいただきまして、その直後に行われた衆議院本会議では、不信任案を大差で否決をしていただきました。
また、昨日私が記者会見を行いまして、2次補正予算と公債特例法と再生可能エネルギー法案が成立すれば、6月2日に申し上げました「一定のめど」がついたと考えるということを、その席で明言をさせていただきました。
言うまでもありませんが、2次補正予算は二重債務ローンや、あるいはいろいろな原発事故に対する補償問題など1次補正に盛り込めなかった問題で緊急のものについて盛り込むことで7月中旬には提案ができる予定になっており、被災地の皆さんが強く望んでおられるので、これを成立させなければならない。これは場合によっては野党の皆さんもそう思っていただいているのではないかと思っております。
また、公債特例法は自民党政権時代から赤字国債を発行するために成立させていたもので、これが成立しなければ、赤字国債分の予算が執行できないわけでありまして、たんに政権が行き詰まるというよりも、地方への交付金やあるいは子ども手当、あるいは公務員の給与などの支給が困難となるわけでありますので、そういう国民生活に対する大きな影響が出る課題であり、これも何としても成立をさせなければならない。どの政権にとってもこのことは必須の要件だと考えております。
また、再生可能エネルギー促進法案は、3月11日に、ちょうど大震災発生の日に閣議決定をし、その後衆議院に提出している法案でありまして、原発事故を踏まえて再生可能エネルギーの促進は急務である、このように考えております。これもこの国会で何としても成立させなければならない、このように考えているところであります。
今回の原子力事故を受けて、内閣としてはこれまでのエネルギー基本計画を白紙から見直すことを決め、議論を始めております。世界的にも議論が沸騰しております。このエネルギー政策をどのような方向に持っていくのかというのは、たぶん次期国政選挙でも最大の争点、あるいは議論になるのではないかと思っております。そういった意味で、今回の原子力事故により、わが国の原子力行政の脆弱性が明らかになった中で、IAEAに提出をした報告書でも、できるだけ率直に政府として問題点を明らかにいたしました。後世に禍根を残すことがないように、原子力行政の改革についても早急に一定の方向を出したいと考えております。すでに民主党の方でもこの問題を検討するPTが発足していると聞いておりますけれども、できれば党と内閣の両輪でこの問題に取り組んでまいりたいと考えております。
私としては残された時間、完全燃焼する、そういう覚悟で、この三つの課題、そして残された期間の中で原子力行政の本当に禍根を残さない方向性だけは示すことができればと思っております。
3月11日から約1週間、私は本当に眠れない日々を過ごしました。今思い起こしても、その1週間は、この原子力事故による、どこまでの被害が拡大するのかしないで済むのか、瀬戸際にあったと思っております。しかし残念ながら、その時点では、こういった問題に対する対応の態勢が必ずしも十分でないために、国民の皆様に、その時その時の状況を正確に伝えることができなかったことを心からお詫び申し上げたいと思います。もちろん今後こういう事故を起こしてはならない、再発をさせてはならないということが原則であり、万々が一にもこういったものが起きたときには、迅速かつ的確な対応ができるような原子力行政のあり方、このことを方向づけるのが3月11日を経験した私たちの責任ではないかと思っています。
ただ、このことはもちろん長い時間が最終的にはかかりますので、私としてはその時間の許される中でのこの問題の方向性、それを打ち出すところまでやらせていただきたいという意味で申し上げているわけでありまして、そのことは誤解をいただかないようにお願いをいたしたいと思います。簡単ではありますが、私の、6月2日の代議士会で申し上げたこと、そして、今日までの中で考えていることについて、皆様にご理解をいただきまして、ぜひとも、わが党がしっかりとやるべきことをやった中で次の世代にバトンを譲っていくことができるように、ご協力を心からお願い申し上げて、私のご挨拶とさせていただきます。どうもご静聴ありがとうございました。
菅総理の発言に対して出席議員からの質疑応答を行ったのち、岡田克也幹事長は「総理は『一定のめど』について、三つ明確に言われたと思う。これらが満たされた時にはバトンタッチするということを菅さんはかなりはっきり言われた。われわれの選んだ総理であり、一定の敬意を持って最後三つのことが満たされるまでの間は総理としての仕事ができるよう全員で後押しをしてほしい」と集約した。
総会では、藤本祐司参院議員の党広報委員長への就任、先の統一地方自治体選挙の総括についても了承した。
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