衆議院政治倫理審査会(奥野誠亮会長)は26日午後、財団法人「ケーエスデー中小企業経営者福祉事業団」(KSD)からの資金提供問題に関し、自民党の額賀福志郎前経済財政担当相の審査を約2時間にわたって行った。審査会は衆院議員25人の傍聴を認めただけで、非公開で開催された。
審査会では、まず額賀議員が「あたかも贈収賄事件の疑惑の対象のようにマスコミや世間の非難の的にさらされ、国会でも追及を受けたが。これらは全く事実無根で誤解に基づくもの」との弁明書を読み上げ、疑惑を全面否定した。
続いて、与野党から7人の議員が額賀議員に対して質疑。民主党からは佐々木秀典、荒井聡両議員が質問した。質疑応答の主な内容は次の通り。(敬称略)
●佐々木秀典議員
佐々木「“役に立ててくれ”とか“協力したい”と言われて預かった金だと記者会見で言っているが、常識で考えればこれは“献金したい”ととるのが普通だ」
額賀「秘書は一応預かり、大金なので代議士の判断を仰いでから処理しようと考えていたということだ。そのご報告を受け、趣旨のわからない金なので、即座に返却の指示をした」
佐々木「官房副長官だからといっても、会館に行かなくても電話くらいできたはず。(半年もの間)会っていないということはないだろう」
額賀「代議士の判断を仰いでから処理すべきと考えたが、1日延び、2日延び、こういうことになった。いずれにしても国民が納得できる説明になっているとは思わない」
佐々木「500万円、1000万円はどうやって受け取ったのか」
額賀「500万円は平成11年11月、(KSDの)古関理事長から直接(KSD)本部で受け取った。1000万円は、小林(照夫)秘書が本部に呼ばれたが、古関氏は来客中であり、代わりに総務部長から“古関から”と言われ受け取った。その際、“まもなく古関が帰宅するので、ロビーで会釈でもして挨拶してから帰ってくれ”と言われ、そうしたということだ」
佐々木「返却したときになぜ領収書をもらわなかったのか」
額賀「今考えればそれが適切。(返却に行った)小林秘書から古関氏に電話を替わってもらって、それで安心してしまった。正直そこまで頭が回らなかった」
佐々木「平成12年4月に1000万円を預かったのは、(現)橋本派のパーティーの前か後か。金がパーティー券の代金に流用された事実は?」
額賀「平成12年4月上旬に預かり、その後返却した。流用はしていない」
●荒井聡議員
荒井「進んで証人喚問を申し出るべきでは」
額賀「あくまで国会の審議に従う」
荒井「政治倫理審査会は虚偽の答弁をしてもとがめられない。虚偽が発覚したら、議員の職を辞する気持ちはないか」
額賀「自分で関知していることについては率直な思いを述べている」
荒井「弁明では古関氏と親しくないとしているが、なぜそんな人が1500万円も“お役に立ててください”と持ってくるのか」
額賀「趣旨、目的については承知していない。だからこそ返却させた」
荒井「古関氏はむだなお金は使わない人。93年にはKSDの不明金で、1500万円が政界に流れ、翌年彼は藍綬褒章を受けている。96年には、4500万とも5000万円とも言われる不明金が政治献金に回され、参議院での中小企業特別委員会の設置時期にも重なる。99年から2000年の疑惑ではものつくり大学の議論が与野党でされるようになった。すると1500万円の趣旨は明らかでは」
額賀「ものつくり大学については議連に入っていないし、経緯についても関与・働きかけはしていない。官房副長官の時期であり、平成11年の暮れは予算を作っており、整備新幹線、児童手当、歯科医師会の診療報酬等が主要テーマだった。ものつくり大学については全く認識がない」
荒井「平成10、11年にKSDは労働省から会計処理について指摘をうけ、健全化を指導されている。1500万円を返した月に、労働省はKSDに立ち入り検査を行っているが、官房副長官なら知りうる立場にいたはずだが」
額賀「知らない。平成10年当時は防衛庁長官で、テポドンが政治的関心事だった」
荒井「平成12年5月、週刊朝日がKSDの特集を組んでいる。官房副長官であれば、まったく関心がないはずはない」
額賀「当時は4月小渕前首相は倒れ、森政権発足、竹下氏の引退など激動の時期だったので、関心を持っていなかった」
荒井「職責かすれば不自然だ」
審査会終了後、傍聴していた菅直人幹事長が佐々木、荒井両議員とともに記者会見を開き、「額賀氏の弁明は全く説得力がないというのが全体の感想だ。労働省の立ち入り検査や週刊朝日の報道があって、1500万円を急遽返却させたと言うのがわかりやすい筋道だ。受け渡しに関わった秘書の話を聞く必要もあるし、本人の責任もあいまいだ。やはり証人喚問が必要だ」と感想を述べた。
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