有害な自動車排ガスを抑制するため、国会で審議中の自動車NOx(窒素酸化物)法の改正案をめぐり、道路建設を所管する国土交通省の要求に応じて、環境省が法案を事実上骨抜きにする内容の「覚書」を提出していたことを、31日の参議院環境委員会で民主党の福山哲郎参議院議員が明らかにした。
改正法案では第24条で「都道府県は大気汚染防止に関し意見を述べることができる」と記している。ところが、この条項について覚書は「都道府県が述べる意見には、個別、具体の道路事業に係るものは想定されない」「環境省は技術的助言として、この点を都道府県に対し周知する」などと自動車環境対策課長名の入った文書が、法案提出直前の平成13年3月20日付けで約束しており、事実上、環境省が道路行政に口をはさめなくなる内容だ。
この日の審議でも、それまで環境省側は「道路建設など各種の公共事業についても環境保全上の意見は言える」と説明していたが、この覚書はそれとは全く正反対の内容。福山議員は「こんな覚書があると道路行政に環境省は何も言えなくなるし、いったいわれわれの審議している法案は何なのか。法案の全くの骨抜きで、国会審議を軽視している」と激怒。委員会は約30分紛糾し、中断した。
最終的に、川口順子環境相が「覚書は破棄する」と答弁し、事態は収拾、同改正案は全会一致で可決された。しかし、自動車環境対策を所管する官庁が、国会審議と食い違う内容の裏取引をしていたことに、民主党など野党の委員は不信感を強めている。
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