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2001/10/01
雇用問題とセーフティネットで民主党の具体案示す〜代表質問で北橋健治議員
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小泉首相の所信表明演説に対する衆議院本会議での代表質問で10月1日、民主党・無所属クラブの2番手として、北橋健治衆議院議員(経済産業ネクスト大臣)が質問に立ち、雇用問題と社会的セーフティネットを中心に、政府の姿勢を質した。

 北橋議員は「日本再生には、金融改革と並んで、雇用と老後不安を取り除けるかどうかにかかっている」と指摘。「国民が知りたいのは、決意やスローガンではなく、改革の具体的中身とスピードだ」と前置きして、質問に入った。

■雇用対策を景気対策の最大の柱に

 まず、雇用情勢について小泉首相が所信表明演説で「公共職業安定所には、求職者を上回る年間700万人もの求人があり、バブル期に匹敵する水準だ」と述べたことについて、「およそ厳しい現実からかけ離れた発言だ」と北橋議員は指摘。「有効求人倍率は0.59%に過ぎず、就職をあきらめた主婦など420万人を加えると失業率は10.4%に達する」として、首相の認識の甘さを厳しく批判した。首相は「構造改革が実行されれば、今後5年間でサービス部門で530万人規模の雇用創出が期待できる」と答弁したものの、各論は原稿にある項目を棒読みで羅列しただけだった。

 北橋議員は、ブレア労働党政権下でのイギリスの雇用対策を例に、「雇用対策は不良債権処理の事後処理ではなく、景気対策の最大の柱と位置づけ、公共事業を削減してでも、雇用対策に予算をシフトさせるべき」と提言した。

 また、雇用のセーフティネットの整備については、「財政的な裏付けがなければ政策論議は困難」として、予算規模を明らかにするよう要求。同時に、民主党が提唱している「今後3年間で雇用保険制度を充実・安定させるために2兆円の基金創設」「雇用保険の給付が終わった失業者や自営業廃業者のための、2兆円規模の最長2年間の職業能力開発支援制度」への見解を尋ねた。。

 北橋議員は、雇用におけるミスマッチの解消については、「職業紹介、職業訓練の一体化が先決だ」と指摘。カウンセリングや職業訓練、職業指導、再就職を一貫して行う「長期失業者就職実現プログラムの創設」や「個人契約型職業紹介サービスの導入」などの民主党の具体策を示し、首相の賛同を求めた。。

 現在政府が検討されている労働者派遣制度、有期労働契約、裁量労働制の見直しについて、北橋議員は「派遣元、派遣先企業、労働者の利便性向上につながる一方、雇用全体の拡大にはつながらず、かえって雇用の不安定化を招く」とし、「拙速な見直しは問題だ」と指摘した。

 さらに、北橋議員は「公共的分野での雇用を先導的に生み出す努力が重要」と述べ、「環境リサイクルなど環境分野、病児保育、延長保育、低年齢児保育、育児アドバイザーなど多様な保育サービス、学童保育への支援拡充、技術支援を目的とした海外支援プログラム」といった民主党のプランを示し、緊急雇用創出プランの拡大を総理に求めた。

 また、1日から優遇措置の申請に入るNPO税制について、「実際には認定基準が厳しすぎて、ほとんど認定されない」と指摘したが、首相は「できるだけ多くのNPO法人にこの制度を積極的に活用してもらうことを期待したい」と述べるだけで、認定基準の見直しの必要性には触れなかった。

■未来の安心を取り戻すことが経済再生の鍵

 次に北橋議員は、「未来の安心を取り戻すことが経済再生の鍵」との見地から、福祉ビジョンについての首相の見解を質した。

 まず医療制度改革について、北橋議員は「厚労省が公表した試案は、国民・患者への大幅な負担増と給付削減策にすぎない」と指摘。「高齢者医療のあり方については方向性すら示していない」「健康保険の財政悪化の問題は、放置されたままだ」と糾弾し、試案の撤回を求めた。

 首相が所信表明演説でふれなかった介護保険についても、「保険料、介護の質の改革が期待されている」として、ビジョンの明らかにするよう迫った。

 年金制度改革についても「骨太方針には具体的な対策への言及がなく、危機感が感じられない」と指摘。破たんが相次ぐ生命保険会社の経営環境の改善についても、早急に結論を出し、実行するよう求めた。

■政府は中小企業の切実な現実にこたえよ

 中小企業を守るセーフティネットにテーマを移した北橋議員は、「地下の大幅下落に伴い、土地担保に見合って融資が縮減されて、つぶれなくていい企業まで、『息切れ倒産』に追い込まれるのではないか」と事態を憂慮し、政府施策は、その切実な現実に応えてはいないと批判した。その上で、「中小企業が不良債権処理の道連れにされないために何をなすべきか、国会は早急に答えを出さねばならない」として、民主党の政策として、「個人保証の撤廃」「売掛金債権を担保とする新金融対策」「情報開示を通じて中小企業への金融を円滑化する金融アセスメント法案」「政府系中小企業金融機関の統廃合と中小企業への配慮」「下請代金支払遅延等防止法の改正など下請対策の強化」を提案した。

■目先の株価対策ではなく証券市場改革を

 続いて北橋議員は、経済産業の活性化策として、まず証券市場改革をあげ、「個人投資家の信頼を失わせている原因を直視し、まず証券業界や市場自体への国民の不信感を払拭する対策が不可欠だ」と指摘。そして、民主党が提出している「公正取引委員会のような独立性をもった証券取引委員会の設置」法案への賛同を求めたが、小泉首相は、「現行体制で十分だ」と述べるだけだった。。

 また、国際競争力回復のための、民間の研究開発・環境関連の設備投資に対する投資減税の断行や、知的財産権の21世紀戦略の早期確立を求めた。

 さらに、農産物セーフガードについては、「世界的な保護主義の蔓延を許すならば、自由貿易体制の恩恵を最も受けてきた日本の受ける打撃は、計り知れない。農産物セーフガードの本発動はそのトリガーになりかねない」との見方を示し、「回避するための農業再生プログラムの策定・実行」とともに、「中国との外交努力に全力を傾注すべきだ」と提案した。これについて、首相は「輸入増加と国内産業の損害との因果関係の有無を十分見極めた上で総合的に判断し、発動する」などと一般論でかわした。

■報道統制になる個人情報保護法は再検討を

 環境問題については、日本はCOP3の議長国として、できるだけ早期に京都議定書を批准し、京都議定書を発効させるべきだと要求。さらにCOP7に向け、京都議定書の批准と経済的措置を含む国内法整備への取組みを明らかにするよう求めた。

 最後に北橋議員は、前国会で政府が提出した「個人情報の保護に関する法律案」について、「出版や報道への過剰規制にもなりかねない重大な問題点がある」と指摘。個人情報取扱事業者の義務の適用除外として報道機関等をあげている点について、「取材・報道活動に萎縮的効果が働くことが懸念される」とし、報道統制とも疑われかねない条文の削除、法案の再検討を小泉首相に求めた。

 しかし小泉首相は「報道を統制するものには全くなっていない」と北橋議員の指摘を否定し、個人情報の保護のために自主努力を求めた法案だとあくまでも強調した。

 この日の小泉首相は終始原稿の棒読みに終始。また、北橋議員が時間の都合で割愛した質問に答弁してしまうという失態を演じ、野党議員の激しいヤジをあびていた。

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