参議院厚生労働委員会で18日、先の参議院選挙で当選した民主党の辻泰弘議員が初の委員会質疑を行った。
辻議員は「政治の目的は庶民のしあわせを大きくすることにある」とし、それが自らの信念でもあると主張。坂口厚労相に対して質問した辻議員は「消費者・生活者の立場からの行政につとめてほしい」として、その視点から、省庁再編後10ヶ月を経過して、2つの省庁合併をどう評価しているか質した。
坂口厚労相は「縦割り行政ではできえなかったスムーズな流れができた」として、地域と職域の医療の一本化、仕事と子育ての両立支援の一本化などを例にあげた。一方、組織が大きくなった分、全体をまとめるには困難が伴うとした。
辻議員は坂口厚生労働相のこうした率直な意見に対し、「それだけ生活に密着しているひとつの現われだろう」と分析。消費者・生活者の立場からの行政につとめるよう、重ねて要請した。
次に、“経済主体の効率の追求が全地球的規模で行われること”と定義されるグローバリゼーションの流れが世界中をおおっているが、先のジェノバ・サミットで明らかになったようにグローバリゼーションには光と影があると辻議員は分析。「その影の部分を見つめ、充分に対応していくのか政治の責任だ」との考えを示した。また、辻議員は「競争原理の貫徹の上に人間のしあわせはない」とし、弱肉強食の激流に庶民が巻き込まれないようにすることが政治の使命だとした。
続けて構造改革における骨太の方針について、経済合理性の追求が前面に出すぎ、競争・効率の論理に偏っているのではないかと指摘。“構造改革なくして景気回復なし”とするキャッチフレーズが端的に示すように、景気回復・経済成長自体が目的化しすぎていると分析。「それらは国民の生活を良くするための手段であって、目的化してはならない」と強調した。
同時に、庶民の生活・雇用問題を理解しているとは思えない発言をくり返す小泉首相をきびしく批判。8月28日に失業率5%になった途端、翌日に雇用対策国会として位置づけると表明した小泉首相の姿勢にも辻議員は「5%は確かに象徴的ではあるが雇用情勢がきびしいことは6〜8月とも変わりはなかったはず」とし、一国の首相としては見識が乏しすぎるときびしく指摘した。
また、医療制度改革試案については、「経済政策とは別の範疇に属するが、国民負担増を求めることで景気への影響はないか」とし、経済動向を直視しながら医療改革を進めるべきと提起した。
続けて、補正予算の概要について雇用・社会保障面両面について質問。「それによる雇用創出はどの程度増えるのか」と迫り、あくなき雇用問題追及への姿勢を示した。
辻議員は改革先行プログラムでは新公共サービス雇用などが検討され、資金確保の方針も出されている点にふれ、雇用創出につながる前向きな取組みを要請した。また、学校における少人数学級の推進、保育・介護・看護従事者の人員確保など、雇用創出に資する政策実現を求めた。
さらに、労働分野の規制改革について言及。労働分野の規制改革に先立ち、パートや派遣社員などに対する公正労働基準を均等待遇にしていくことこそが先決だと主張。増大しているパート・派遣・短期雇用者が不利になる制度は早急に改善すべきだと重ねて要請した。同時に、短期勤続者が相対的に不利になる退職所得控除の算出方式の改善の必要性も指摘した。
最後に、医療改革による難病対策の制度化、小児・救急医療の充実、病院の看護体制の強化、介助犬・盲導犬の法律上の位置づけを明確にすることによる社会的認知の向上などについても問題提起し、質問を締めくくった。
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