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2004/09/22
普天間米軍基地の返還問題と在日米軍基地問題に対する考え
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民主党

基本的な考え方

(1) 民主党は、本土復帰後30年以上たった今なお、沖縄に在日米軍基地面積の約75%が集中し、過重な負担を県民に強いている事態を重く受け止め、一刻も早い負担の軽減を目指し、沖縄問題に取り組んできた。1996年、日米両政府が設置した「沖縄に関する特別行動委員会(SACO)」は、普天間米軍基地の返還をはじめとする在沖米軍基地の整理・統合・縮小の内容に合意したが、SACO合意が期待通りに進まない間に、地域・国際環境は大きく変化し、米軍の軍事技術も目覚しい進展をみせている。このような状況を踏まえて、民主党は、2002年、「民主党沖縄ビジョン」で、SACO合意の早期実施と適切な見直しを行うSACO2の設置を求めている。

(2) 民主党は、日米安保条約がわが国の安全保障の基軸であり、また、日米同盟関係はわが国の安全保障のみならず、外交、経済などにおいても重要であるという認識に立つ。従って、在日米軍基地問題については、お互いの国家利益にいかに有用かの視点をもちながら、日本としての主体性、要望、戦略を持った上でアメリカとの戦略対話を行うべきである。アメリカによる占領政策の延長上に基地が存在しているという両国間の一部に未だに残る潜在意識を払拭し、現在、アメリカで進められている米軍の再編(トランスフォメーション)に基づく在日米軍基地の再編について、アメリカ側の考え方を踏まえながらも日本独自の提案をまとめ、アメリカとの交渉に臨むべきである。

(3) アメリカがイラク作戦遂行のために墜落機と同型の米軍ヘリを飛行させたことは、これまでの日米安全保障条約下における在日米軍基地の役割を変容させるものである。にもかかわらず、政府はこの状態を看過しており、民主党は、日米同盟の将来像を見据えながら、日米安全保障条約の見直し及び日米地位協定の見直しの議論を進めていかなければならないと考える。



具体的な提案

[1]普天間米軍基地返還アクション・プログラムの策定

(1) 普天間米軍基地機能の分散などによる使用停止
 普天間米軍基地の危険性が再三指摘される中、96年のSACO(沖縄に関する特別行動委員会)の返還合意から約8年経つ今も、そのめどさえたっていない。普天間米軍基地の返還が完了するまで、地域住民を危険に晒し続けることは避けるべきである。イラク戦争に振り向けられていない普天間米軍基地の海兵隊の残存兵力を考慮すれば、普天間米軍基地機能を他の米軍基地に分散するなど、返還に向けてまず基地の使用停止の道を模索すべきである。

(2) 事故原因の徹底究明と再発防止策
 今回の在沖海兵隊ヘリ墜落事故は、沖縄県だけの問題ではなく、日米安保条約のもと駐留米軍に施設を提供している日本国全体の問題である。とくに、在日米軍基地を抱える地域住民の懸念は小さくない。今回のような事故が再発しないためにも、事故原因の徹底究明と再発防止の具体策が必要である。
 機体の合同検証などにより、事故の原因究明を共同で行うことを義務付けるとともに、日米合同委員会事故分科委員会の議事録を公表するなど、原因究明に必要な措置を速やかに講じるべきである。また、嘉手納ラプコンの返還など、航空管制の主体性を確保して再発防止に全力をあげるべきである。

[2]地位協定の改定

 今回のような事故に対して、日本の主権を確保しつつ、迅速に対処していくため、以下のような内容の事項について日米地位協定の見直しに即刻実現すべきである。また、民主党が2000年5月に提示した全般的な「地位協定改定案」にも取り組むことが必要である。なお、地位協定に伴う国内法(地位協定の実施に伴う刑事特別法など)も併せて改正することが必要である。

(1) 我が国当局による現場検証
 事故発生直後、米軍当局は、わが国当局の事故現場検証を容認しなかったが、米軍施設外はもとより、施設内においても、政府或いは地方自治体の関係者が立ち入りを要請した場合には、米軍が応じることを明確に義務付ける内容に日米地位協定を改定する。

【見直し事項】
a.合意議事録17条10(a)及び(b)関係の2において、我が国当局が、捜索、差押え又は検証を行う権利を行使しないのが原則とされているのは問題である。米軍施設内に加え、米軍の財産に係る捜索であれば米軍施設外にあるものであっても同意が必要とされているが、我が国当局による捜索等への同意を米軍が拒否できる場合を、真にやむを得ない例外的な場合に厳格に限定すべきである。少なくとも、相当な理由がない限り同意を拒否できないこととすべきであり、拒否の理由についての情報開示も行われるべきである。

b.地方自治体の関係者等が要請した場合の米軍施設内への立入りについても、米軍の施設、区域使用についての日本法令の適用の問題と併せて、地位協定の関係規定の見直しを行うべきである。
 すなわち、機密の保護や軍事上の安全を考慮しつつも、我が国所轄機関が公務を遂行する上で必要な、施設及び区域への立入りを含めたあらゆる適切な援助が与えられるべきことが取り決られるべきであり、とりわけ、犯罪捜査のための立入りについては、我が国の主権の確保との関係で重大な問題を生じうることにかんがみ、即時に地位協定の見直しが行われるべきである。

(2) 米軍による現場封鎖
 事故後の米軍当局の行動において、日本国領土であるにもかかわらず、大学構内を封する行為は、日本国主権侵害の疑いが強い。日米両当局の真の共同を確保し、米軍の専行的な警察権の行使を認めない方向とする。

【見直し事項】
 日米合同委員会合意においては、「日米両国の当局は・・・・・・共同して必要な統制を行う」とされている。そのような本来の運用を確保するため、日本国民の生命や財産の保護のために我が国当局が適切な役割を果たせるとの観点から、日米双方の具体的な対応の在り方を整備するべきである。

(3) 刑事裁判管轄
 米軍構成員等による犯罪に係る刑事裁判管轄の在り方は、これまでも、国民の強い憤りの原因となり、地位協定の見直しに当たっての中心的論点となってきた。公務執行中の犯罪の裁判管轄について一定の見直しを行うとともに、「公務執行中」の意義について、米軍による専行的な認定がなされないようにすべきである。

【見直し事項】
 日本国民の法益保護のために我が国当局が適切な役割を果たせるとの観点から、公務執行中の犯罪の裁判管轄について、見直しを行うこととする((例)米軍施設外の場合は日本側に裁判権を移譲するなど)。また、「公務執行中」であるかどうかの認定について、米軍の専行的な権限行使を認めないよう、我が国の立場及び利益を組み入れる形で、恣意的な運用に歯止めをかける規定・認定手続に関する規定を整備すべきである。

(4) 事故直後の通報システムなど、手続きのあり方
 事故発生の通報が錯綜したことは、被害の程度を大きくした怖れもある。また、錯綜する通報ルート、手続きは、事故の検証そして再発防止のあり方を見極める上でも問題である。事故発生後の明確な通報システム、マニュアル作りに即刻着手すべきである。

【見直し事項】
 米軍に関わる事件・事故に係る情報が、我が国当局及び地域社会・住民に正確かつ直ちに提供されるよう、通報体制の整備に関し、その根拠や整備方針を、地位協定に規定すべきである。

以上の見直しによって、今回のような事故等の捜査に関しては、日米両当局の合同捜査を原則とし、人命等が危機に瀕するなど、緊急避難的措置として真にやむを得ない場合を除いて、米軍の専行的な警察権の行使を認めない態勢にすべきである。

[3]在日米軍基地の再編問題等の中で在日米軍基地問題に関して持つべき具体的視点

 2003年11月、ブッシュ大統領は、米国防総省が進めている在外米軍再編に関し、部隊の配置・規模の見直し、基地の整理及び移転に向け、米議会や友好国・同盟国との協議を12月上旬から本格化させるとの声明を出した。極めて重要な問題であるにもかかわらず、わが国政府は、これまで事前協議制度をないがしろにし、日米協議において主体的にわが国の考える基地の整理・縮小のあり方を示していない。

 民主党は、本年7月の「参議院選挙マニフェスト」で、「アジア情勢などを踏まえつつ、日米の役割分担を見直し、米軍の在外基地の再編(トランスフォメーション)の機会にあわせ、在沖縄海兵隊基地の国外への移転を目指します。普天間基地の返還については、代替施設なき返還をアメリカに求めます。」と主張した。この観点から、沖縄基地に限らず、在日米軍基地全体のあり方について、次の具体的整理・縮小案を検討していくべきである。また、先般行われた移転を前提としたボーリング調査の開始は、この方針に反するものである。

(1) 民主党の主張する普天間米軍基地の返還は、有力な米専門家などが在沖縄海兵隊のグァムなどへの移転を提案し、米政府関係者からも検討に値するとの発言があることも踏まえ、この実現を積極的に模索すべきである。沖縄はもとより日本国内に普天間の代替施設を探すことは実現性に乏しく、仮にそれを進めることが出来ても施設の建設などに相当の年数が要されると考える。なお、普天間米軍基地返還後は、沖縄県、宜野湾市に残る跡地利用について、政府として全面的に支援すべきである。

(2) わが国有事及び周辺事態に備えるため、グァムなどへ移転された海兵隊が訓練を行うことは、キャンプ・シュワブ内のヘリポートを拡充するなどの措置をとり、部分的に容認する。また、海兵隊の移動に使用される固定翼機が、緊急時に使用できる米軍嘉手納基地以外の滑走路を手当てすることは必要と考える。

(3) その他、全ての航空管制権の返還を求めると同時に、横田基地の自衛隊への移管と米軍との共同運用化や、航空自衛隊の府中基地との整理・統合を模索する。また、硫黄島が活用できない場合を想定し、厚木で行われている空母艦載機の夜間飛行訓練(NLP)のあり方を検討する。実部隊を伴わない米軍司令部機能のあり方にも取り組んでいく。

[4]日本有事を念頭にした視点

 米軍は、今回の事故原因や再発防止策の提示など、政府や国民に対する十分な説明がないまま、イラク作戦遂行のためとして、8月23日、先の沖縄県宜野湾市の米軍ヘリ墜落事故によって飛行を中止していた事故機と同型のヘリを飛行させた。まさに在日米軍基地が戦争の一貫として使用されていることを明白にするものであり、有事において、米軍によるなし崩し的な日米安保条約の運用を憂慮する。米国は、イラク戦争の真っ只中にあり、有事の際の地位協定のあり方などについて検討すべきである。

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