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2001/10/24
<参院テロ関連法案審議>歴史の教訓に学び、公正な判断を〜佐藤道夫議員
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民主党・新緑風会の佐藤道夫参議院議員は24日のテロ対策特別法案をめぐる参議院連合審査会の質疑で、独自の視点から今回のテロ対応の問題点を鋭く衝いた。

 これまでも佐藤議員は、法律家の視点での鋭い言説で知られていたが、少数会派に所属していたため、十分な時間をかけた国会質疑はできなかった。今年夏の参院選で民主党比例代表で当選し、今回初めて1時間の質問時間を使い、じっくり自説を展開した。

 佐藤議員は、今回のテロ対策でなおざりにできない問題点として、「過去の歴史的な教訓をどう受けとめ、今回のテロ対応に生かすか」「国連独自の司法機関行使の必要性」「タリバン政府からの要求の妥当性とそれを拒否した米国政府の矛盾」「タリバン後の政権を模索する国際社会のゆがんだ構造」「テロ対策が不十分だった米国政府の姿勢」などを指摘。

 まず、歴史的教訓として「第一次大戦も今回同様、テロから始まった」と説明。バルカン半島でオーストリア皇太子夫妻にむけてテロリストが撃った銃弾が夫妻の命を奪い、世界の列国を巻き込み、死者800万人に及ぶ第一次世界大戦へと発展した歴史を述べた。佐藤議員は「この戦争終結に乗り出したのは米国のウィルソン大統領。“国家間でテロが発生した場合、国際協調の精神に立ち、平和に議論して解決に導こう”として国際連盟をつくった」と説明した。

 また、「300万人もの死者を出すことになった第二次世界大戦の終結に乗り出したのも米国だった。あらゆる問題を平和裏に解決するため、国際連盟をさらに強化する形でつくられたのが国際連合だったはずだ」と指摘した。

 また、明治24年に日本の警察官が来日中のロシア皇太子に切りつけた大津事件を例に「このとき大審委員長の児島惟謙は“外国皇族殺害未遂犯を死刑にできる条文はない”とし、政府の要請を断り司法権の独立を守った」という事実を紹介。

 これらの事例から、佐藤議員は今回のテロ対策について、「こういうときこそ国連が立ち上がり、自らが調査会をつくり、被害者である米国を調査して、米国が“証拠がある”としている点を明らかにすべきだ」と指摘。国連独自の司法機関をつくり、裁判する形があってもいいのではないかと提案した。

 そして佐藤議員は事件1週間後にオサマ・ビンラディンを犯人と断定し、タリバンに関する証拠が一切ないまま「かくまうヤツも同罪だ」とした米国のブッシュ大統領の姿勢を、「一国の大統領にあるまじき言動だ」と述べて、首相の見解を求めた。

 小泉首相は「堪忍袋の緒が切れるような、限界を超えたからこそ米国は立ち上がり、国際社会が立ち上がったのだと思う。証拠がないのでもっとゆっくりやれ、何もするなといった態度は、日本としても、首相としても取り得ない」と答えたが、これに佐藤議員は半ば呆れながら、「衆議院で示された証拠は情況証拠にもなっておらず、推測の域を出ない。あんなので起訴したらどこの国の裁判所だって無罪を言い渡す」と反論。「長い歴史のなかで証拠の徹底追及→公正な裁判というルールづけを行ってきたはずの米国が、被害者になった途端にそのルールを無視し、非合理的な論理を展開している」と戒めた。

 次に、“証拠を米国が提示すれば、犯人を第三国に引き渡す”としたタリバンの姿勢について佐藤議員は「犯人の生命を守るため、当事国の米国ではなく、第三国へ委ねるというのは当然」と見解を示し、これを受け入れずに空爆を開始した米国の姿勢に重ねて異議を唱えた。

 また、佐藤議員は、北部同盟を支援し、タリバン後のアフガニスタン政治のあり方を模索している国際社会の状況にも疑問を呈し、「アフガニスタン国民が目指す国づくりを手助けするのこそ、日本をはじめ文明国の役割だ」と提言した。

 さらに、佐藤議員は江戸時代末期の「生麦事件」など歴史的事例をあげながら、「自国民を外国に引き渡さないのは国際法の大原則」として、「アフガニスタンにオサマ・ビンラディンの引渡しを求めることは筋が通らない」と指摘。小泉首相に、「今の法制度に従って解決していく、相手の立場も尊重してやっていく、西部劇の時代じゃないんですよとブッシュ大統領に言ってほしい」と求めたが、小泉首相は、「話しても通じない相手のテロリストと戦うんだから難しい」などと述べるばかりだった。

 最後に佐藤議員は、米国政府の危機管理について、「FBIはじめ4つの情報機関をもち、オサマ・ビンラディンらを危険視する警告を発していたにも関わらず、航空機搭乗時のチェック体制の確立など、安全対策に真剣に取組んでいたとは思えない」と指摘し、「米国追従ではなく、こうした一連の問題点の指摘を米国に対して行うべきでないか」と求めたが、小泉首相は「テロ対策を充分にとっていなかったのが悪く、テロがいいといったように聞こえる」とあくまで否定的に受け止めるだけで、議論は平行線をたどったままに終始した。

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