民主党は30日、「テレビ字幕普及法案」を衆議院に提出した。
聴覚障害者がテレビ放送を楽しめるように、2007年度までに字幕化9割の実現に向けて、各放送局に実施計画提出を義務づけるこの法案は、民主党が今年1月にネクストキャビネットin NETで一般から募集した1000件の政策アイデアから採用されたもの。重度の聴覚障害を持つ同志社大学経済学部2年の深田麗美さんと母親の美知子さん=京都市在住=が提案した。
テレビ番組の字幕普及率は米国の3大ネットワークが約90%であるのに対し、日本はNHKが17.9%、民放はわずか2.9%にすぎない。米国では、電子通信法で、番組提供事業者などに原則としてすべての番組に字幕をつけることが義務づけられているが、日本の場合は、放送法で努力規定が設けられているだけと、法律に大きな違いがある。
麗美さんは、発音訓練を受け、普通学校に通い続けたが、勉強で苦労したことはあまりなかったものの、教室でのトレンディドラマについての話題にはついていけなかったのが辛かったという。昨年はじめて字幕化された松嶋菜々子さん主演の人気ドラマ「やまとなでしこ」を親子で見て、「一緒にドラマを見るって、こんなに楽しいんだ」と実感、偶然知った民主党の政策募集に電子メールでアイデアを送った。
この日、国会を訪れた深田さん親子はまず鳩山代表と国会内で面談。鳩山代表が「いい提案をありがとう」とお礼を述べると、麗美さんは「こういうことになるとは思っても見ませんでした」と照れながら答えた。
この後、二人は法案づくりを担当した島聡、武正公一両衆議院議員といっしょに、国会内の衆議院事務総長室に向かい、谷福丸事務総長に直接法案を手渡した。島議員が「技術的には難しくないことです」と説明すると、谷事務総長も「国会テレビも字幕化しなければなりませんね。速記者になる人が減っているが、新しい仕事ができるかも」と応じていた。【写真上】
また、ネクストキャビネット会議の冒頭で、紹介された麗美さんは「これから高齢化社会になることを考えると、聴覚障害者だけでなく、耳の遠いお年寄りにも役に立つと思うので実現させてほしい。これからも障害があるからできること、私にしかできないことを、前向きに考えていきたい」とあいさつし、大きな拍手をあびた。【写真下】
その後、国会内での玄葉光一郎ネクスト総務大臣の記者会見にも同席。玄葉議員が「各党の理解を得て、ぜひ成立させたい」と抱負を語ると、麗美さんも「生活面のバリアフリーがなくなれば、心のバリアフリーもなくなると思う」と明るく語った。
|