衆議院外務委員会の閉会中審査が18日行われ、民主党・無所属クラブの2番手として質問に立った首藤信彦衆議院議員は、「今回の事件はまさに新時代テロリズムである」との見方を示し、「この危機的状況にあって日本は対応を間違えると、50数年かけて築きあげてきた安全保障システムと平和の哲学が一瞬にして崩れる可能性がある」と注意を喚起した。
首藤議員はまず、テロが発生したとき“戦争”と表現したブッシュ大統領の姿勢に対して、田中外相が「卑劣な行為に断固として戦うという強い決意を込めて、“戦争”という言葉を用いたのではないか」とした点について言及。「単なる思い込みだけでなく、当然のことながら戦争としての定義を込めている」と指摘した。
首藤議員は湾岸戦争における宣戦布告について質したのに対し、「宣戦布告ではなく、国連の決議において行われた」とする田中外相の答えに、「では今回、米国がもし実力行使に踏み切るときは、その宣言はだれが行うことになるのか」と質問。国連憲章51条に基づくとする田中外相に対し、「国連憲章51条に基づいて戦闘行為を行った場合、当然ながらブッシュ大統領には戦争権限法の規定がなされる。それについてはどう思うか」としたのに対し、「仮定の議論には入るわけにはいかない」と議論を避けた。
戦争の基本的認識すらあやふやな田中外相の答弁ぶりに、首藤議員は「私たちはここにいったい何をしにきているのですか」と呆れ、「戦争責任は議会が負うか、それとも大統領か。国連憲章51条において行われるのか、その場合には戦争権限法によって大統領の行為が規制されるのか」など、答弁を重ねて迫った。この指摘に対しても外相は「仮定の話、ましては武力行使については答えられない」という姿勢を崩さなかった。
首藤議員が「日本の対応ではなく、アメリカがどういう行動に出るかを外務大臣に問うているのだ」としたのに対し、「評価する立場にない」と外相はコメント。これには須藤議員も語気を一段と強め、「同盟国である以上、間違った方向に進みそうになった場合、相手国を指摘するのが本来あるべき姿だ」とした。
オサマ・ビンラディン氏を首謀者だとしている点についても、首藤議員はその根拠を質した。「それを応える立場にはない。米国が調査中だ」とする田中外相に対し、「同盟関係にありながら、なぜ軍事展開しているかわからないということでいいのか」と重ねて迫ったが、田中外相は「関連情報については機微に当たるので現在は公表を差し控える」とした。
首藤議員はあらゆる点が明確でない現状にあって、「周辺事態法も変える、新法もつくる、自衛隊の体制も変えるといった議論が沸騰していること自体、奇異だと言わざるを得ない」と指摘。同時に犯人も確定されていない事件後、すぐに「復讐する、報復する」としたブッシュ大統領、また「アメリカの立場を理解し、報復を支持する」と表明した小泉首相の姿勢についても、疑問を呈した。
首藤議員は「軍事活動を起こす場合は、精神論を超えたところで、細部にわたって打合せをしなければならない。となれば、現時点でわかっていることをしっかりと把握し、時間をかけて議論し、しっかりとした対応を考えなければならない」とし、「事実を何ら把握するまでもなく事態が進んでいる奇異さ」を重ねて指摘した。
「現行法でどのような対応が可能か。周辺事態法ではアフガニスタンに兵を送ることは可能か」と質したのに対しても、「現行法の範囲内で、あらゆるケースを想定しながら、さまざまな角度から検討中だ」「仮定の議論には立ち入らない」とするだけで田中外相は具体的なコメントは避けた。首藤議員は「これは外務省だけの問題ではなく、わが国の存亡がかかっている問題。それを仮定の話だから議論しないというのでは、外務委員会の意味がない」ときびしい口調で批判した。
最後に首藤議員は「アジアにおけるテロの防止策に日本はリーダーシップをとって真剣に取り組まなければならない」と問題提起した。
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