2日、衆議院総務委員会は郵政関連法案をめぐる地方公聴会を札幌市内で開いた。郵政労働組合関係者、大学教授、消費者協会会長の3人が意見陳述を行い、民主党からは後藤斎、松沢成文議員が出席した。
意見陳述者の最初に、全日本郵政労働組合北海道地方本部執行委員長の秋田喜美男氏は、郵政事業現場の立場から北海道内における郵便ネットワークの規模および活動の特徴について報告。「過疎と過密化が進んでいる中で細部にわたる公平なサービスを提供している。道内状況を考えても民間が参入する際にユニバーサルサービスの確保についての問題はあるのではないか。また雇用の拡大と地域の活性化も含めて郵政事業の民間参入に対し、賛成はできない」と意見を述べた。
北海道大学大学院文学研究科教授の金子勇氏は、「研究によると交番、学校、公民館、郵便局が1km圏内に存在することがコミュニティづくりの核となり、高齢社会の情報センターとしても活用できる。その上でも郵便局の存在は大きい。単に民間参入を認め、効率性だけを求めるのではなく、個々のネットワークの特徴を生かしたものに作り変えていくべき」とし、地域コミュニティにおける郵便局の重要性について意見を述べた。
また、社団法人札幌消費者協会会長の山本順子氏は「都市部ではコンビニエンスストアが現代社会におけるネットワーク構築の重要なインフラになっているが、過疎地においてはコンビニにかわるライフラインとなるものが郵便局である」とし、「今後は民も官も様々な地域において求められるサービスに対応していく仕組みをつくることが大事である」と述べた。
意見陳述に続き質疑に立った後藤議員は、今回の公社化法案はきわめて中途半端なものであり、民間の活力を削ぐようなものであることを指摘し、金子氏に同氏の“郵便局と地域のコミュニティ”の論点で考察すると「現行の国家機関が行っている郵政事業に戻ってしまうのではないか」と質した。金子氏は「4つ(交番、学校、公民館、郵便局)のうち1つが機能していれば問題ない。さらに民間の営利的業務形態から鑑みると過疎地になればなるほど郵便局にしかできないサービスもあり、必要性は大きいのではないか」と答えた。
続いて後藤議員は秋田氏に「雇用と地域の活性化について郵政事業の中間管理執行部が現場に近づいた取り組みができるかということが公社化されても求められる課題であるが、どのように考えているか」と意見を求めた。秋田氏は「同感だ。各地域においても対応が違うことから現場に判断を委ねられるような新しい体制づくりを行い、雇用と地域の活性化を促すという観点で中間管理執行部の見直しは一番の課題である」とその重要性を述べた。
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