衆議院総務委員会は5日、郵政関連法案をめぐる総理出席の質疑に続いて、同法案の採決を行った。その結果、政府提出の郵政公社法案および同施行法案は与党の修正案が通って修正議決され、信書便法案、同関係法整備法案はそのまま可決された。民主党は、信書便2法案と与党の2つの修正案に反対した。
採決に先立つ質疑で民主党から質問に立った安住淳議員は、郵政事業への民間参入の見通しをめぐって小泉首相を追及。「信書便法案が成立すると、どの民間会社が参入し、どういう競争になるのか」と質した。首相は、「特定の民間会社を念頭においていない。民間会社に郵政事業をめぐっての創意工夫を促す規制改革をやるということ」などとあいまいに答えた。
安住議員は、「民間企業はこの法案に対して、“民間官業化法案だ”“この法律では入れない”と言っている。参入して来なければ、競争にならない。その場合は、省令でハードルを下げるのか」と畳みかけた。しかし首相は、ガイドライン案(「信書の定義に関する政府の考え方」)でクレジットカードや地域振興券などを民間でも扱えるようにしたことを挙げて、「かなりはっきりしたものが入っている」などと述べ、参入がなかった場合の対応については何も答えられなかった。
さらに安住議員は、「今回の法案の成立が“改革の一里塚”だと言うなら、二里塚、三里塚はあるのか」「次にやるのは、簡保、郵貯の問題にメスを入れることではないか。はっきり言うべきだ」などと首相に迫った。だが首相は、「今回は公社化のための法案。その後は自由闊達にあるべき姿を議論してほしい」などとごまかした。
続いて質問に立った後藤斎議員は、与党の修正案では郵政公社による民間企業などへの出資が先行し国庫への納付が遅れることから、公社の肥大化の問題が出てくると指摘。また、公社化によって消費者の利益になるどんなサービスがでてくるかを質した。片山総務相は、ATMの自由な設置、郵便局ネットワークを利用した新事業などを予想しているとした。
後藤議員は、郵便局が福祉などの分野で自治体行政サービスを兼務し地域コミュニティに大きな役割を果たしている面があると指摘。民営化とともに、そうした役割を過疎地・地域対策として維持していくため、地域コミュニティネットワーク法などの整備が必要だと提起した。
採決の討論では、荒井聡議員が法案に対する民主党の態度を明快に表明。郵政公社法案については、郵貯や簡保の問題に手を着けないなど不十分な内容を指摘するとともに、「民間との競争の中から活力を見いだす意図も見受けられる」と評価した。与党の修正案については、国庫納付金を免除し、民間への出資を柔軟に認めるなど「官のいいとこ取り修正だ」と指摘。「族議員との妥協による焼け太り修正案には反対である」と表明した。また、信書便法案については、具体的な信書の定義がなく、許認可でがんじがらめに民間をしばるものだと批判。「民間を入れない民営化法案」だとして反対の態度を明らかにした。
採決で民主党は、政府提出の信書便法案、同関係法整備法案には反対、郵政公社法案および同施行法案に対しては、与党提出の修正案には反対し、その部分を除く政府案には賛成した。しかし、信書便関連2法案、与党修正の郵政公社関連2法案が、与党3党および社民党の賛成で可決された。
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