民主党はじめ、共産、社民3党共同提出の「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」をめぐり、23日の参議院内閣委員会で初質疑が行われた。国会でこの問題が初めて取り上げられてから12年、また昨春の法案提出から1年以上を経過しての、ようやくの審議入りとなった。
法案は、旧陸海軍の関与のもとで組織的・継続的に性的関係を強要され、尊厳と名誉が著しく害された8万人から20万人といわれるアジア諸国やオランダの女性たちに対し、被害者の尊厳と名誉を回復する措置として、被害者への謝罪と補償を国の責任で行うことなどを定めたもの。また法案の名称について、提出者である民主党の円より子議員は、「いわゆる従軍慰安婦を指すが、戦時性的強制被害者としたのは、被害者がその意に反して慰安所に連行され、性的行為を強制されたものであり、従軍慰安婦とした場合は自発的な行動であるかのような誤解を生みかねない」と説明した。
質問に立った民主党の川橋幸子議員は、日本政府が93年8月に官房長官談話などで国の関与を認めたものの、国家としての被害者救済策はとらず、アジア女性基金を通じて民間から募金を集め、それを被害者に配る国民基金方式をとってきたことについて、「苦肉の策・妥協の産物だったが、結局は民間団体の限界が示されたわけで、とにかく国の責任で謝罪しなければならないという立法化の必要性を提示したものだ」と指弾。その上で「人権問題の世界の潮流は成熟しつつある中、戦後補償はサンフランシスコ条約と2国間条約で解決済みとする日本政府の考えは(国際社会で)認められない」と指摘した。
また、民主党の岡崎トミ子議員は「被害者の声を正面から受け止めることがわれわれの義務。本人の声を聞かずに議論するのは失礼でもあり、この場で直接話を伺うことを提案したが実現できなかった」としながら、在日の被害者で唯一本名を名乗って裁判を闘っている宋神道(ソンシンド)さんの証言を読み上げた。16歳のときに連行されて以来、7年間の筆舌に尽くしがたい体験と、日本国としての謝罪があって初めて自分の尊厳が取戻せるとの思いが記された証言に対して、杉浦副外相は「副大臣である前に一人の人間として胸のふさがる思いがした。一人の日本人として誠に申し訳ない思いで一杯」としたが、「国家として政治的に解決する時だと思うがいかがか」との岡崎議員の問いには「戦後補償はサンフランシスコ条約と2国間条約で解決済み」との見解を崩さなかった。
民主党の千葉景子議員も「戦後補償はサンフランシスコ条約と2国間条約で解決済み」との政府見解に、「到底そのようなことで解決する問題ではない」ときびしく指摘。まったく謝罪も名誉回復の措置も講じていない日本政府を改めて批判し、「真摯に対応し、個人保障や名誉回復の措置をとるよう法整備を行うのが立法機関に属するものの役割だ」と訴えた。
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