イラク邦人拘束事件対策本部は22日、国会内で全議員報告会を開き、藤田幸久国際局長がヨルダン派遣団の活動報告を行った。藤田国際局長は事件の起きた9日の深夜、羽田を飛び立ち、翌朝、ヨルダンのアンマンに到着。以降、17日夜帰国するまで現地で情報収集・分析にあたった。報告の概要は以下の通り。
(1)日本政府は、バクダッド、アンマンの両日本大使館とも、ありとあらゆるルートに働きかけをしたと思われるが、「他力本願」の活動が中心であり、最後まで犯人グループの特定、人質の所在確認、直接交渉等はできずに終わったと思う。
(2)結果的に功を奏したのは、イスラム聖職者協会はじめ多くの宗教者が犯人グループに解放を促す働きかけを行ったことと、人質の家族がアルジャジーラやイラクの地元メディアなどで解放を訴えたことが広くイラク、ヨルダンの一般市民に伝わったことである(藤田国際局長もバクダッドのNPOや党本部と連絡を取り、高遠さんのイラクでの活動や家族のビデオが現地で放映されるよう仲立ちした)。
(3)ファルージャは米軍によって1週間で700人近くが殺されたため、全イラク的反米活動のシンボルとなった。悲惨な戦闘の中で連帯意識の強い住民たちが犯人グループを守っていたと見られる。小泉首相が犯人をテロリスト呼ばわりした際、地域住民も反発したと言われる。
(4)イラク情勢は悪化しており、バグダッド市内もグリーンゾーンを除いては無法地帯の様相。今や全イラク国民対アメリカという戦いの様相であり、これにパレスチナやイランも含むアラブ世界全体の反米感情が急速に高まっている。
(5)日本人人質の行動には稚拙で注意不足な面があり、家族の言動も一部身勝手だったことは否めないが、人質及び家族に対する日本でのバッシングは異常に思える。自己責任も重要だが、イラクで1万人の無辜の市民を殺した戦争を始めたアメリカを支持し、自衛隊を派遣した「政府責任論」も重要だ。
(6)短期間ではあるが、海外紛争地域に拠点を設けての党活動はコソボ、アフガニスタンに続いて3度目であり、今後の調査、拠点活動にこれらのノウハウを活かすべきだ。中東全体に不安定要素が劇的に拡大している状況であり、民主党としてのイラク問題の取り組みを考えるとき、イラクのみならず中東情勢の推移を党全体として日頃から情報収集にあたる必要がある。
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