衆院予算委員会で6日午後、2003年度予算案に関する質疑が行われ、民主党の菅直人代表が小泉首相と2度目の論争を戦わせた。終始、論点を整理して執拗に追及・提案する菅代表に対し、小泉首相はじめ閣僚は説明責任を回避した、不明確な答弁を重ねた。
菅代表は冒頭、民主党版平成15年度予算案を作成したことを報告。「本来なら民主党の予算案を国会に提出し、内閣提出の予算案とどちらがいいか議論したいところだが、残念ながら現憲法ではかなわない。そこで予算委員会での質疑を通じて、民主党案を国民に示し、小泉内閣案とどちらが日本の将来にとって望ましいか、議論したい。逃げないで真正面からの答弁を」と呼びかけた。主な論点は以下の通り。
●イラク情勢への日本の対応
菅代表はイラク情勢への川口外相の考え方を質問。午前中の同委員会で「イラク査察で疑惑を裏付ける証拠が出ないのは、イラクが協力しないことに問題がある」といった主旨の答弁をした川口外相に対し、菅代表は「つまりは予め『有罪』を断定したうえで、自白しないのはおかしいと迫っていることに論理的にはなる」と指摘。政府が大量破壊兵器の査察の実行ではなく、あらかじめイラク政権の武装解除を求める立場をとっていることを問題視した。
また、6日未明にパウエル米国務長官がイラクの査察妨害に関する録音・写真を公表したことをめぐって、「ロシアやフランスも結局のところ、査察の継続が必要だとの認識を示している。日本は新たな国連決議なしの米国の軍事行動を支持するのか」と質した。それに対して小泉首相は「イラクが懸念を払拭していない。むしろ深まったと認識する。国連の査察委員長がイラクを訪れて協議した結果、その後の国連安保理での議論などをふまえ、日本としての最終判断を下す」とした上で、「もうひとつの安保理決議が出されることが望ましい」とした。
●北朝鮮に対する姿勢
菅代表が「北朝鮮に対する韓国の太陽政策に対し、首相は支持を打ち出していた。現在もそうか。必ずしもそれが悪いとは言わないが、イラクと北朝鮮に共通する大量破壊兵器の開発疑惑を見ると、北朝鮮の方が日本にとって大きな脅威ではないか」と追及。これに対し小泉首相は、「イラクと北朝鮮は似ているが、経緯が違う」などとし、北朝鮮に対しては「平和的解決に向けて関係国と緊密に連携して働きかける」とする一方、「イラクはクウェートに侵攻した後、停戦決議に10年以上違反し、大量破壊兵器を使用した経緯がある」と強調し、国際社会と協調した対応が必要だとした。菅代表は日本の首相であるならば、イラクより北朝鮮の脅威を重く受け止め、それをいかにして取り除くかに心血を注ぐべきではないかと注文。また川口外相に対し、北朝鮮における人権抑圧について、国連の人権委員会など国際的な機関に対し、現地調査の実施を強く働きかけていくべきだと提案した。
●財政健全化の目標と実績
菅代表は、小泉首相が就任以来、「骨太の方針」等で、2010年初頭のプライマリーバランスの黒字化を目指すとしてきた点について、「前進しているのか、それとも後退か」と塩川財務相に質問。塩川財務相は「一時後退したが、2013年をめどにプライマリーバランスをゼロにする方向で進めている」となどとした。菅代表は小泉首相就任後のプライマリーバランスの推移をパネルで見せ、「(方針は繰り返しだされているが)実際には一度として上にあがってはいない。これで前進といえるのか」と指弾。併せて、こうした後退が1年9ヶ月まえに発表した税収見通しの誤りに起因することを明らかにした。
この点への答弁を求められた塩川財務相は、最初、椅子から立ち上がらず答弁を回避しようとしたが、議長に連呼されてしぶしぶ起立。「骨太の方針を出した折りの税収見通しは少し間違っていたのは事実」として、見通しの誤りを認めた。
●デフレ克服・行財政改革の現状
まず菅代表は、2002年の初頭に出された「改革と展望」と03年になって出された改訂版との違いを確認。02年版では、02年の1年間の集中調整期間ではデフレ克服が最重要課題と位置づけられ、その後は「物価上昇はプラスに転じると見込まれる」とされていたが、今年の改訂版では集中調整期間をまず1年延ばし、その上で見通しを「デフレは克服できると見られる」と修正していることを明らかにし、「だいぶ腰が引けてる」と政府の姿勢を批判した。
菅代表は民主党版平成15年度予算案に盛り込んだ「100万人創出予算」「地方分権推進予算」「住空間倍増予算」などについて具体的に説明し、国民の現状に即した税のあり方について小泉首相はじめ閣僚に提言した。
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