衆議院外務委員会は10日、日朝国交正常化交渉および拉致事件に関する閉会中審査を行った。民主党・無所属クラブからは、木下厚、中川正春の両議員が質問に立った。
木下議員はまず、9月17日の小泉首相による北朝鮮訪問が決定された経緯について質問。首脳会談開催で合意した8月25日〜26日の日朝事務レベル会合の時点で、外務省担当者が拉致被害者の安否についてどの程度の情報を入手していたのかを質した。田中大洋州局長は、「(北朝鮮側は)誠実かつ深い調査を行っているとのことだった」などとし、具体的な安否情報については入手していなかったとした。木下議員は「そんないいかげんなことで総理を北朝鮮まで連れていったのか」と一喝し、外務省の事前交渉のずさんさを断罪した。
木下議員はまた、首脳会談の当日朝に8名の拉致被害者が死亡しているという情報を受け取りながら、平壌宣言の文言を一字一句変えることなく、そこに署名したことについて、「これが交渉か」と厳しく批判。金正日総書記が拉致を認め、謝罪したといっても、宣言文に盛り込めなければ証拠がないとし、「なぜそこでもう一泊するなど時間をかけて、事実確認や宣言文の再検討などをやらなかったのか」と詰め寄った。田中局長は、「北朝鮮が拉致を認め、謝罪したことは国際社会では幅広く知られている」などと苦しい弁明に終始した。
続いて質問に立った中川議員は、木下議員の質問を引き継ぐ形で、まず日朝首脳会談の際に日本の代表団が松茸などのおみやげをもらって帰ってきたと伝えられていることについて、「国民世論を考えれば、説明すべき」と質した。田中局長は「どこの国でも、何をおみやげとして交換したかは外交儀礼として公表しないもの」などと述べ、暗に事実であることを認めた。
中川議員は、首脳会談後に金正日総書記が拉致問題に関する発言を一切行っていないことを指摘し、拉致問題に対する遺憾の意を国際社会に向けて総書記自身の言葉で表明するよう今後の交渉の中で要求すべきだとした。川口外相は「(拉致問題の)事実解明に北朝鮮が誠意を持って真剣に取り組むとしていることを見守りたい」などと答えるにとどまった。
さらに中川議員は、国交正常化交渉と拉致問題、安全保障問題での交渉とを並行して進めようとしている政府の交渉方針を批判。「国交正常化というこちらのカードを拉致問題、安保問題と切り離してしまってどうするのか。あくまで拉致問題、安保問題を国交正常化交渉の前提条件とすべきだ。小泉内閣は功を焦りすぎているのではないか」と詰め寄った。しかし安倍官房副長官は、「拉致問題の解決がなければ正常化しないというのが総理の一貫した方針だ」と述べるにとどまった。
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