21日の衆議院本会議で、民主党の鳩山由紀夫代表に続き、中野寛成幹事長が小泉首相の所信表明演説に対する代表質問に立ち、主に内政問題に絞って首相を追及した。
中野幹事長は冒頭、首相の所信表明について「この政権はいよいよやる気を失ったとの強い印象を持った」と痛烈に批判。経済再生国会だとされながら、期待された総合デフレ対策も示さず、拉致問題や核開発問題を踏まえた日朝国交正常化交渉についても展望が欠けたままだと指摘した。
まず竹中金融・経済財政担当相が打ち出した“反省なきペイオフ解禁2年間延期”と“デフレ対策なき不良債権加速化”について、小泉首相が「政策転換ではない」と繰り返し述べていることを取り上げ、「首相にあるまじき危機意識の欠落だ」と痛烈に批判。デフレ退治の具体策が示されなかった点についても、「大胆かつ柔軟な措置を講ずる」といった意味不明の逃げ口上だけでは、政府の方針を理解することは不可能だと指摘し、「雇用や中小企業経営者の不安を断ち切る安全網対策はどこに消えたのか。補正予算を見送るという判断はどこから来たのか、何のための臨時国会なのか」と詰め寄った。
しかし小泉首相は、「デフレを克服しながら、民間需要主導の持続的な経済成長を実現するために政府と日銀が一体となって総合的な取り組みを行う」「金融システム安定化策、構造改革の加速策、雇用や中小企業対策などのセーフティネット策を含む対応策を今月末に取りまとめる」と、具体性のない答弁に終始した。また、今国会に補正予算を提出する考えがないことを改めて示した。
失業対策と雇用の確保について中野幹事長は、失業手当給付期間の延長、自治体やハローワークだけに依存しない柔軟な失業対策、職業訓練など再教育を保障する個人を対象とした給付制度の拡充、雇用保険財政の安定化などに取り組むよう、首相に求めた。また、景気浮揚効果のある十分な補正を組むためにも、首相の思いつき的な口約束「国債30兆円枠」そのものの撤廃は避けられないと指摘した。
加えて中野幹事長は「財源は、国債以外にもある」と指摘。従来型の公共事業を大胆に見直し、それを介護、医療・健康、環境や新エネルギーなど新しい分野への人材育成や投資などに振り替えることで、大きな景気浮揚効果が生まれるとの考えを示した。同時に、NPOをはじめ非営利団体の活動支援による新たな雇用創出策も提案。民主党を始めとする野党が提出しているNPO支援税制法案に賛同し、その成立を急がせるべきだ、と首相に迫った。
年金改革をめぐって中野幹事長は、小手先の見直しであってはならないと指摘。将来の年金ビジョン、そのための制度改正の方向性を首相に質した。首相は「平成16年度の次期年金改正では幅広い観点から議論する」とするにとどまった。
また、先の通常国会で健保本人の医療費負担を3割に引き上げ、1兆5000億円もの国民負担増を押しつける改正健康保険法を強行成立させた小泉内閣の姿勢を厳しく糾弾。医療制度の抜本改革について明快な方針を打ち出すよう、首相に迫った。緊急事態法制の整備については、先の通常国会での政府案のずさんさを改めて指摘した。
大島農水相の前秘書官の斡旋収賄問題について中野幹事長は、国民の政治不信が極まり、首相も「国民の政治への信頼なくして、改革の実現は望めない」と述べていながら、所信表明では「政治とカネ」の問題に対する取り組みが欠落していたことを怒りを込めて批判した。
最後に中野幹事長は、「民主党はまず、この国の経済再生に取り組むと同時に、崩壊の危機にある日本社会の再生に大胆にチャレンジするものであることをここに宣明する」とし、代表質問を締め括った。
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