参議院予算委員会の25日の質疑で質問に立った民主党の佐藤道夫議員は、北朝鮮拉致問題、政治倫理、集団的自衛権をめぐる憲法解釈などについて、首相および関係閣僚に質した。
佐藤議員はまず、政府が帰国中の拉致被害者5名について、本人たちの意向に関わりなく北朝鮮に帰国させない方針を決めたことを取り上げ、「帰国者の意思もある。北朝鮮に家族も含めた自由往来を求めるべきではないか」と質した。小泉首相は、「家族、被害者のそれぞれの事情も勘案した上で、政府として対応を決めた」と述べるにとどまった。佐藤議員は、今後の日朝交渉において、北朝鮮に千数百人が在住しているといわれる、いわゆる「日本人妻」についても対象に含める形での自由な往来の実現を目指すよう要請した。
次に佐藤議員は、今日の政治における倫理意識の風化について言及。大島農水相前秘書官の口利き疑惑を念頭に置きながら、「自民党の政権下で、次から次へと、イヤになるくらい不正・汚職問題が繰り返されてきた。しかも、今もって“政治に倫理はいらない”などと言っている人もいる」と述べ、首相に所見を求めた。首相は「不祥事は残念。倫理の前提として、法律を守らないことが問題だ」などと述べたが、佐藤議員は「議員一人ひとりの心構えの問題だ」と応じ、次期国会で政治倫理問題に関する所信を明らかにするよう首相に要求した。
さらに佐藤議員は、石破防衛庁長官が集団的自衛権の行使を合憲だと主張してきた問題をめぐって質問。「集団的自衛権は憲法上行使できないという政府を国会で合憲論の立場から追及してきた人が、入閣したら“仕方ない”と違憲論になるのか。政治家のモラルを越えて、人間性の問題ではないか」と厳しく追及した。小泉首相は「議員個人の考えはあっても、私の内閣ではそれを政治課題にのせないということで承知してもらっている。問題ない」とかわしたが、石破長官は「閣僚が政府の憲法解釈に従うのは当然。ただ、今の解釈の中でどこまでできるのか、検討は精一杯やってみたい」などとこだわりをにじませた。
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