米国などのイラク攻撃開始を受けて20日夜に開かれた衆院本会議で、民主党からは岡田克也幹事長が質問に立った。岡田幹事長は、小泉首相が国際協調をあきらめ日米同盟を選択したこと、米国の攻撃支持を表明するに至る過程で国民への説明責任をまったく果たしてこなかったことについて、小泉首相の重大な失政を指摘し、謝罪を要求するとともに、米国のイラク攻撃支持の撤回を強く求めた。
「とうとう戦争が始まった。この戦争によって多くの犠牲が生まれ、罪のない命が奪われることは確実。何とかこの戦争を回避し、イラク問題の平和的解決ができなかったのか、本当に残念に思い、同時に無力感を感じる」と前置きして質問に入った岡田幹事長は、まず、「民主党は、イラクがこれまで累次の国連決議を守らず、大量破壊兵器に関する疑惑を自ら払拭してこなかったことを強く批判してきた。同時に、査察を強化し継続することで大量破壊兵器の完全廃棄を行うことは可能であるし、そうすべきだと主張してきた」とイラク問題への民主党の基本姿勢を表明。今回、ブッシュ政権が開始した武力攻撃については、「国連安保理での問題解決を放棄し、単独主義的な武力行使を開始したことは国連憲章など国際法の原則に違反する行動であり、これを容認することはできない」と厳しく批判し、武力行使の中止を強く求めた。
続いて岡田幹事長は、小泉首相に対し、国際社会が一致してイラク問題に対応すべき、日米同盟と国際協調の両立をめざすことが重要−−という首相の外交目標がいずれも達成されず大失敗に終わったことを率直に反省すべきだとし、答弁を求めた。小泉首相は、自らの失政には触れず、「残念なことにイラクは国際社会の真摯な努力に応えず、自ら平和の道を閉ざした。大量破壊兵器の廃棄の先頭に立ってきた米国に同盟国として可能な限りの支援を行うのは当然」だと開き直った。
また、「その時に考える」「その場の雰囲気で決める」などと繰り返し、国民への説明責任を果たしてこなかったことに謝罪すべきとの問には、「自分の考えと一致しないと『答になっていない』。見解が違うと『説明していない』。いくら説明してもお気に入りの説明責任を果たしていないというが、政府には政府の立場がある」と気色ばんでみせた。その上で、支持表明の撤回を求められた小泉首相は、「武力行使なしに大量破壊兵器が廃棄し得ない状況では、今般の行動を支持することが国家利益に適うと考えており、撤回する意思はない」と言い切った。
岡田幹事長はさらに、小泉首相が米国の攻撃を支持する根拠に上げた(1)国連決議1441号など一連の国連決議が武力行使の根拠であり、国連憲章違反でない(2)大量破壊兵器が独裁者やテロリストの手に渡った場合、何十万人の生命が危機に直面する(3)日米関係の信頼性を損なうことは、北朝鮮問題も含む国益に反する−−という3点について、「いずれも説得力に乏しい」とし、一つ一つについて首相の見解を質した。
2月3日の岡田幹事長の代表質問の再々質問に「1441号の決議を守らなかった場合に自動的に武力行使を容認しているものではない」と答弁したこととの齟齬を問われた首相は、「イラクは1441号で求められる義務を履行しておらず、停戦条件を定めた687号のさらなる重大違反となり、678号に基づいて武力行使が正当化される」と湾岸戦争当時の安保理決議まで持ち出して理屈を述べ立てた。
大量破壊兵器の廃棄のために「なぜ数ヶ月の査察の継続が待てないのか。総理の論理は飛躍がありすぎ粗雑すぎる」との批判に対しては、「イラクの小出しの協力は、米国の軍事的圧力あってのこと。イラクの姿勢が根本的に改められない限り、査察の継続は有効たり得ない」。
「同盟国であればこそ率直に語り、ブッシュ大統領を説得すべきだったのではないか。国連安保理の手続きを無視し、国連の権能と機能を弱めることこそが国益に反するのではないか」との問には、「日本国民の多くが反対していることは承知しているが、大量破壊兵器の脅威は決して他人事ではない。武力行使なしでは廃棄がなし得ない中では、同盟国として米国の行動を支持することが国家利益に適うと考える。これからも日米の緊密な連携のもと、国際協調を図っていきたい」と述べ、米国追従の姿勢をあらわにした。
|