米国などのイラク攻撃が開始された20日、これを支持する態度を表明した小泉首相の報告に対する質疑が参議院本会議で行われ、民主党・新緑風会を代表して広中和歌子議員が質問に立った。広中議員は、米英などによる今回のイラク攻撃が国連憲章違反であり、イラク市民および世界に深刻な悪影響をもたらすものであることを指摘。直ちに米国に攻撃中止を申し入れるよう、小泉首相に強く迫った。
広中議員は冒頭、今回の武力行使でイラクの多くの一般市民が犠牲になり、また何十万という難民が発生することを指摘、それをどう受け止めるかを小泉首相に質した。しかし首相は、この問いには答えられなかった。
広中議員は、今回のイラク攻撃が、自衛権行使あるいは安保理決議による容認以外の武力行使を禁じた国連憲章に違反していることを明らかにし、これを支持する根拠を問い質した。しかし小泉首相は、10数年前の湾岸戦争当時の国連決議(678、687)や武力行使を想定していない決議1441をイラクが履行していないことをもって、今回の攻撃には根拠がある、などと強弁した。
次に広中議員は、今回のイラクへの先制攻撃が武力行使の連鎖を生み、ひいてはテロの脅威の蔓延や文明の衝突を引き起こす危険があることを指摘したが、小泉首相は「武力行使が一刻も早く、被害も少なく終結することを私も求めている」などと欺瞞的な答弁。国際間の問題は辛抱強い外交努力で解決すべきだと指摘されると、「イラクの対応(大量破壊兵器の完全廃棄を受け入れない)を根本的に変える見通しが見出せない状況のもとで、武力行使はやむを得ない選択だった」などと居直った。
また、戦争による日本経済への悪影響や環境破壊について質したのに対して、小泉首相は「経済・金融市場は安定的に推移している」「さらに原油の安定供給、金融システムの安定確保に努める」などと楽観的な発言に終始した。日本として戦費の負担などを行う意思があるかについては、「戦費の負担は考えていないし、そのような要請もない」とした。
さらに広中議員は、米国を支持するのは北朝鮮問題への協力が必要だからか、と追及。首相は、「米国はかけがえのない同盟国」「米国が大量破壊兵器の廃棄という国際社会の大義に従って自ら大きな犠牲を払おうとしている今、可能な限りの支援を行うのは当然」などと、尋常でない米国への追従ぶりを披瀝した。
広中議員は最後に、「日本は世界最初の大量破壊兵器の被爆国であり、武器輸出をしたことがないという特質を生かして『平和国家』を今こそ世界にアピールする機会だ」と力強く提起。速やかに米国にイラク攻撃中止を申し入れるべきだと首相に要請して、質問を締めくくった。
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