1日午後、衆院本会議において、民主党と与党からそれぞれ提出された「国民投票法案」をめぐって質問と答弁が展開され、民主党からは古川元久衆院議員(憲法調査会事務局長)が与党案および民主党案に対する代表質問を行い、民主党ならびに自民・公明・共産・社民・国民の各党からの質問に対しては、枝野幸男(党憲法調査会長)、鈴木克昌、小川淳也、園田康博の各衆院議員が答弁を行った。
代表質問に立った古川議員は、委員会での議論の中で与党が民主党の考え方を取り入れて当初の案を多くの点で修正したことを率直に評価しつつも、いくつかの点で考えを異にしていると述べた上で、質問に入った。
古川議員は、国民投票法の目的が憲法改正権限を国民の直接民主制的手続に委ねている点にあるとして、自民党に対しては国民投票法の実現が改憲のためであるのか、公明党に対しては自民党の改憲案実現の手助けのためであるのか、民主党に対しては国民投票法制定自体が改憲を目的とするものとの批判にどう対応するのか、それぞれ質問した。自民党の船田議員は、憲法改正の実現を図るのは公党として当然としつつも、国民投票法そのものは中立公正なものだと答弁した。公明党の斉藤議員は、公明党は加憲論であって自民党と異なるが、改正手続は公正中立なものだと答弁した。民主党の小川議員は、この法案は憲法改正の肯定も否定も含めて国民の自由な議論を保障し、国民の意思表明に道を開くためのもので、改憲に直結するものではないと答弁した。
古川議員は、民主党案では憲法改正のための国民投票制度に加えて国政の重要課題に関する一般的国民投票制度も導入することとしている理由を、与党案では後者を外している理由をそれぞれ質問した。民主党の小川議員は、国民が直接意見表明するためのもので、間接民主制を補完する諮問的なものだと答弁した。自民党の船田議員は、一般的国民投票制度は国権の最高機関である国会の意思を拘束するおそれがあるので自民党案に盛り込まなかったと答弁した。
古川議員は、国民投票の投票者の年齢要件が民主党案では18歳以上になっているのに対して、与党案では20歳以上となっている理由と公明党のマニフェストにある18歳選挙権の実現との矛盾についてそれぞれ質問した。民主党の小川議員は、民主党は選挙権も18歳にまで引き下げることを主張しており、若い世代の声を政治に反映させるためであると答弁した。公明党の斉藤議員は、公明党は18歳選挙権を目指しているが、選挙権と国民投票権は同一年齢とすべきであり、選挙権が20歳という現状では止むを得ないとの答弁を行った。
古川議員は、憲法改正の成立に必要な国民投票の過半数を計算する際の分母をどのようにとるかについて、民主党が○印以外の記載をしたものなども有効投票として分母に算入するのに対して、与党案が○×以外の記載をしたものは無効投票として分母に算入しない理由をそれぞれ質問した。民主党の小川議員は、所定の投票用紙を用いない投票のみが無効であるとし、複数の候補者から選択する選挙における無効投票の考え方との違いを強調した。自民党の船田議員は、白票には様々な意見が含まれるので、一様に分母に入れるわけには行かないと答弁した。
古川議員は、国民投票に関する運動の規制のあり方について、とりわけ特定の公務員に対する国民運動規制、買収罪を設けるかどうか、などについて、それぞれに質問した。民主党の園田議員は、国民運動への規制は最小限とするため投票事務関係者のみに限定し、買収罪は自由闊達な憲法論議を妨げる恐れがあるので設けないと答弁した。公明党の斉藤議員は、国民運動規制は裁判官・検察官・警察官などまで対象とし、買収罪は要件を絞り込んだ上で設けると答弁した。
自民党の甘利議員の質問に対しては民主党の鈴木克昌議員が、公明党の石井議員の質問に対しては鈴木議員と小川議員が、共産党の笠井議員と社民党の辻元議員の質問に対しては枝野議員が、国民新党の滝議員の質問に対しては園田議員が、それぞれ答弁に立って民主党案の正当性と優位性を説いた。
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