衆議院本会議で22日、内閣提出の「職業安定法及び労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律の一部を改正する法律案」について趣旨説明と質疑が行われ、民主党・無所属クラブを代表して鍵田節哉議員が質問に立った。
鍵田議員は冒頭、リクルート事件や人材派遣会社からの不正献金が明るみに出て逮捕された坂井隆憲衆院議員の事件を取り上げ、人材派遣業の規制緩和をめぐる業者と政治家、役人との不透明な関係は国民の政治不信を増幅させると指摘。「この時期にまたしても規制緩和によって業者に便宜を与えるような派遣法改正案の提出をどう考えるか」として、坂口厚労相に質した。
坂口厚労相は「こうした事件と労働政策の実施とは別次元の問題。労働政策がこうした不正な資金提供の問題等によって歪められているとは思わない」とする見方を示した。
また鍵田議員は労働者派遣法改正の意義について質問。鍵田議員はILO181号条約にもある通り、本来は労働力の需給調整に関し、官民の事業が相互に協力する体制を構築すべく十分な基盤整備を行い、必要な法規制を加えるべきである点を指摘。「しかし今回の労働者派遣法改正案は派遣先・派遣元の都合だけが優先され、それ以上できないというところまで規制緩和を行う内容となっており、臨時的・一時的という位置づけは名ばかりで、派遣先にとって安い労働力の調達・使い勝手のよさだけが強調されている」と指弾。鍵田議員は法改正にあたっては本来、「派遣労働者が本当に安心して働ける状況をつくり、対等に交渉できる雇用環境の保障」「リストラの波のなかで、正規従業員の派遣社員化を安易に促進しないための実効性の確保」の二つが論点であるべきだと坂口厚労相に提案した。
鍵田議員は続いて、一年以上働きたいという派遣スタッフと、長期間働いてほしいという派遣先との双方のニーズがあることを理由として、今回の改正案で現行の派遣期間制限を一年から三年に延長した点に言及。鍵田議員は「ところが派遣期間制限の延長が、派遣元と派遣労働者との契約延長にはつながるとは限らない」と指摘。派遣元と派遣先が一年間の契約を結んだとしても、派遣元と派遣スタッフ間では三ヶ月契約の更新といったケースが発生する懸念が払拭できない点を問題視した。しかも、連合の調査によれば、中途解約を経験したのは登録型派遣労働者は26%にのぼり、また契約の短期化だけでなく、賃金の値崩れ、時間外労働が当たり前で拒否すれば仕事がないといった実例がある点にも言及。こうした点をふまえて鍵田議員は、派遣期間と雇用期間のズレを埋めていく、少なくとも使用者責任が不明確になりがちな登録型派遣は常用型に切り替えるなどの措置こそが必要であると指摘した。
さらに改正案のもうひとつの焦点として、製造工程業務の派遣解禁問題を取り上げ、派遣期間が1年であっても一気に広まる可能性を秘めており、労働監督の強化や安全衛生法規の見直し等、前提となる施策の充実が不可欠だと鍵田議員は指摘。同時に、偽装請負を追従することになり、製造業の外部委託がさらに進むことになるとの見方を示し、「戦後のわが国の発展の原動力となってきた『ものづくり』が危機的状況にいたることを懸念する声も少なくない」と指摘。製造業務の派遣労働の解禁にあたっては、こうした偽造請負を含め、違法派遣に対する制裁措置が十分に担保されなければならないと言及した。
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