衆議院の個人情報の保護に関する特別委員会において25日、締めくくり総括質疑および討論・採決が行われ、野党提出の個人情報保護法案ならびに関連3法案は賛成少数で否決。政府提出の5法案が可決された。同時に、「施行3年後の見直し」など11項目の付帯決議が、与党および社民党を除く野党3党などの賛成多数で採択された。
小泉首相も出席しての質疑では、民主党・無所属クラブから石毛えい子、平岡秀夫の両議員が質問。石毛議員は、個人情報保護法制の重要ポイントとして自己情報コントロール権、センシティブ情報の扱いの問題を改めて取り上げた。
自己情報コントロール権については、「自己に関する情報について自分で管理できるということは、現代 社会における重要な基本的人権の一つ」と指摘し、法律に明記すべきことを訴えた。小泉首相は「理解できる」としながらも、自己情報コントロール権が概念として確立されていないこと、報道の自由との調整も明らかでないことなどを挙げ、規定を取り入れるのは「適当でない」などとした。野党案提出者を代表して答弁した民主党の山内功議員は、自己情報コントロール権を「憲法のプライバシーの権利から導き出されるもの」と位置づけ、法律の目的規定に本人関与の重要性を盛り込むとともに、目的外使用制限の例外規定縮小など本人関与を強める内容を取り入れたことを説明した。
またセンシティブ情報について石毛議員は、政府案に保護規定がないことの理由を質し、同時に個別法制定に対する見解も尋ねた。細田科学技術担当相は、保護規定の欠如について「個人が知られたくないあらゆる情報についての手続きを、より広い感覚で取り上げた」などと合理化。個別法については小泉首相が、「個別分野での取り扱いの実態を調査し、追加的措置も必要なら検討していく」とした。山内議員は、政府・与党がセンシティブ情報の定義があいまいだとしていることに対して「個人の思想、信条、人種、民族等の尊重というのは憲法にも明記されている明確な概念」と反論し、センシティブ情報保護に関わる規定が自治体の6割で採用され、国際的な流れでもあることを指摘。個別法についても早急に整備するよう求めた。
平岡議員は、まず個人情報の保護を担当する行政機関について質問。政府案における主務大臣制は、誰が所管するのか、適切な立場なのか、などがあいまいになると批判し、内閣府の外郭として公正な取り扱い確保を管轄する個人情報保護委員会を設置するとした野党案を評価した。答弁を求められた小泉首相は「主務大臣の担当で十分」と述べたが、平岡議員は「なぜ十分なのかの理由もない。その程度の理解で議論されたのではこれまで何のために審議してきたのかわからない」と厳しく指弾した。
また平岡議員は、政府案では個人情報の目的外使用の規制が甘い、と指摘。野党案提出者の民主党・細野豪志議員も、政府案では「相当な理由」があれば目的外使用できることになっているが、野党案では「行政事務の円滑な遂行に著しい支障が生じる場合」との限定をつけ、さらに個人情報保護審査会に意見を求めねばならないなど、厳しく枠をはめていることを示した。これに対して片山総務相は、「第三者がチェックすると膨大な量の審査が必要になり、組織や人員など、行革に反して大変だ」などと後ろ向きな発言を繰り返した。
採決に先立つ討論では、民主党・無所属クラブから今野東議員が発言し、自己情報コントロール権、センシティブ情報の扱い、主務大臣制、目的外使用の問題のほか、個人情報取扱事業者に対する義務規定の適用を除外しつつも自主努力規定を残していること、裁判の管轄について規定がないことなど、政府案の問題点を列挙。「個人情報保護に名を借りて官僚や与党に都合のいい法律を作ろうとするもの」と断じた。
採決は、政府提出5法案および野党提出の4法案を一括して行い、野党案は賛成少数で否決、政府案が与党3党の賛成などで原案通り可決された。
採決後、個人情報保護法案、および行政機関個人情報保護法案のそれぞれに対して、適法・適正な情報取得、国民生活への過剰規制への配慮、施行後3年をめどとした主務大臣制に代わる第三者機関の検討など11項目を盛り込んだ付帯決議が提案され、与党と野党3党(社民党を除く)などの賛成で採択した。
|