衆議院本会議で6日、民主党、自由党、日本共産党、社会民主党が共同で提出した個人情報保護関連4法案、および内閣提出の個人情報保護関連5法案に対する採決が行われ、野党案は賛成少数で否決、政府案が原案通り可決された。採決に先立つ討論では、民主党・無所属クラブの石毛えい子議員が、野党4党案に賛成、政府案に反対の立場から発言した。
石毛議員は冒頭、「政府は廃案となった旧法案に、行政機関に関しては罰則を設け、報道機関等に関しては適用除外する等の修正を加えた上で、国会に出し直してきたが、官僚による国民管理という思想が依然として背後にある一方、官僚自らには甘い法案であることに変わりはない」と断じた。石毛議員はその不安を象徴する事件として、防衛庁が自衛官募集にあたり、住民基本台帳から満18歳を迎える適齢者情報を抽出するよう市町村に要請し、提供を受けていた問題を取り上げ、「行政が家庭の情報を勝手に収集・蓄積して活用しているのではないかという国民の不安・不信を増幅させた」と指摘。「不透明に行われている行政側の情報収集やセンシティブ情報の収集を何ら禁ずることのない政府案では、この国民の不信や不安を到底払拭できない」と指弾した。
石毛議員は続いて、政府案には自己情報コントロール権に関する規定がないことを指摘。「個人情報保護法制の哲学がないも同然で、個人情報保護とは名ばかりだ」とした上で、対する野党案は個人情報の取得、利用、第三者に対する提供等に関し本人が関与することその他の個人の権利利益を保護する旨の規定の明記があり、自己情報コントロール権の社会的認知を後押しする具体的な措置を講じている点を重視した。またセンシティブ情報について石毛議員は、特に慎重な取扱いを求めるべきだとする考えを示し、「特段の規定を設けていない」のが政府案であり、「特に慎重な取扱いを個人情報取扱事業者及び行政機関に義務付けている」野党案の優位性を指摘した。
次に、個人情報の保護に関する法律案について石毛議員は「個人情報保護の名の下に行政が恣意的介入を行えば、国民管理につながる」との懸念を示し、法案作成にあたっては、個人情報保護の名のもとに、行政が国民生活を管理・干渉することのないよう、十分配慮しなければならないとする考えを示した。その上で石毛議員は「政府案は事業者に対する主務大臣の監督権限が依然残されており、恣意的な介入や特定業者との癒着が起きるおそれがある」と指摘。野党案はその点への配慮として、内閣府設置法に基づく第三者機関に権限を与え、国会への報告を義務付けるなどして、恣意的な介入や特定業者との癒着が起こらないよう、最大限配慮する内容となっている点を明らかにした。
続いて、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案について石毛議員は、「個人情報を収集・利用する際の行政機関の裁量の幅が大きいと、国民監視になりかねないくらいに膨大な個人情報が収集されたり、悪用されるおそれがある」と分析。この点について政府案では、個人情報の収集方法や収集範囲等を制限する明確な規定がなく、官僚にフリーハンドを与える内容となっていること、また個人情報の目的外利用の要件がゆるやかで行政の裁量幅が大きく、本人の知らない間に個人情報が流用される恐れがある点を問題提起した。石毛議員は、野党案では利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、提供しようとすることに関しては、個人情報保護の観点から一定の制限を設け、官僚の行動に歯止めをかけているとした。
石毛議員は最後に、「政府案は個人情報保護の名を借りて、官僚や与党政治家にとって有利な、住みやすい世の中をつくるための法案に過ぎない」と重ねて指弾。それに対する野党案は高度情報化社会における真の個人情報保護を目指すと同時に、表現の自由をはじめ、国民生活の自由に最大限配慮した法案となっていると述べ、討論を締め括った。
討論終結後に採決が行われ、野党4党提出の個人情報保護関連法案は賛成少数で否決、内閣提出の個人情報保護関連5法案は賛成多数で可決された。
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