衆議院本会議で6日、内閣提出の「労働基準法の一部を改正する法律案」について趣旨説明と質疑が行われ、民主党・無所属クラブを代表して城島正光議員が質問に立った。
城島議員はまず、現下の雇用失業情勢に対する小泉首相の姿勢について「国民、勤労者が、痛みに耐えて苦境を克服しようと必死の努力をしているにもかかわらず、総理はそこから抜け出すための方向性さえ示していない」と断じ、首相の認識を質した。これに対して小泉首相は「さまざまなサービス分野で規制改革を進めるなどして、530万人雇用創出をめざし新規雇用の創出をはかる」などと、答弁原稿を棒読みするに留まった。
続いて、解雇をめぐる国の政策のあり方について小泉首相に質問。城島議員は景気の落ち込みといった悪循環を断ち切り、日本経済の再生のためにも、国の施策として解雇を規制する法律の整備が不可欠だと指摘した上で、「解雇しやすくする政策は、雇用不安を増大させ、この悪循環に拍車をかけるもので、論外だ」と批判した。この指摘に小泉首相は「解雇に関するルールが社会全体に認識され、解雇をめぐるトラブルの防止、解決につながると考える。雇用不安の拡大や不当解雇の助長を招くとは考えていない」などとした。
また、景気低迷時における経営者のあり方と国家政策の関係について城島議員は取り上げ、日本経団連の奥田会長が繰り返し主張しているように、70年代以降、最高裁判所が形成してきた解雇法理を緩和することがあってはならないとする考えを示した。その上で城島議員は「現在の日本で便乗解雇が横行すれば、社会の底が抜け、社会全体が崩壊し、経営者のモラル崩壊にも直結する」「解雇法理のルールは中小企業経営者にほとんど知られておらず、解雇を巡る紛争を誘発する原因となり、その紛争は労働者だけでなく、中小企業経営者にも経済的・精神的負担がのしかかる」等の問題を列挙した。
今改正案の問題点として城島議員は、改正案の条文を取り上げ、最高裁判決で確立された解雇権濫用法理で、解雇に客観的に合理的な理由があることについて、形式的な証明責任は労働者が負うが、実質的な証明責任は使用者が負担していたものを、今改正案の条文では実質的な証明責任を使用者が負担することに関して全く明記されておらず、雇用権濫用法理を大きく後退させるものとなっていること指摘した。さらに、労働関係において契約自由の原則は修正されなければならないという理念をなし崩しにし、労働基準法において、契約自由の原則、自由競争原理がむきだしのまま労働関係に持ち込まれるおそれがある点を城島議員は指弾。「このままでは解雇促進法になりかねず、抜本修正が何としても必要だ」として、坂口厚労相の見解を質した。坂口厚労相は「裁判実務上の取扱いは従前と何ら変わらない」と答弁した。
就業規則と解雇規制の関係についても城島議員は取り上げた。最高裁が形成した解雇法規では、就業規則に掲げる解雇事由を限定列挙と解することによって、使用者に解雇の理由とその正当性などの説明責任を負わせてきたが、法案審議に当たって、この点に関する基本的論点が完全に抜け落ち、議論も皆無であったことを城島議員は指摘。「就業規則の解雇条項による解雇規制は事実上機能しなくなり、これまで形成された最高裁判決がことごとく覆されることとなる」とする見方を示し、「かかる致命的な欠陥をもつ法案は直ちに取り下げるか、審議会に差し戻し抜本修正すべき」と指弾した。
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