民主党は7日、緊急事態関連法案をめぐる全議員懇談会を開催し、与党との修正協議に対する基本態度について議論した。
懇談会の冒頭、挨拶に立った枝野幸男政策調査会長は、民主党が提出した緊急事態基本法案と政府案への修正案の趣旨説明が行われた6日に与党からさっそく修正協議の申し入れがあったことを紹介。「われわれは拒否する立場にない」として、今後の協議の方向性をめぐる議論を呼びかけた。
参加議員からは、与党が6日に提出した民主党法案に対する見解で基本法案については受け入れを拒み、修正案については一部内容を取り入れる姿勢を示していることについて、あくまで両者は一体のものとして主張していくべきだ、とする意見が出された。『次の内閣』のネクスト安全保障大臣として修正協議の窓口役に当たっている前原誠司議員も、基本法の考え方を強く押していく意向を明らかにした。
また、今後の与党との修正協議については前原議員を中心に進めながら、節目節目で党内における中間報告と意見集約を行っていくことを確認した。
【与党見解】
■「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国および国民の安全の確保に関する法律案に対する修正案」にかかる問題点
1 武力攻撃事態の定義及び認定について
「判断の根拠」まで示すこととすると、主観的な要素が強く、機微にわたる点まで示すことにもなりかねない。したがって、判断の前提となった事実だけを示すことで十分ではないか。
2 基本的人権の保障
すでに、憲法の保障する国民の自由と権利の尊重について規定しており、重ねて規定する必要性に乏しい。民主党案では、表現の仕方にも問題あり。
3 指定公共機関の定義について(民間放送事業者の除外)
NHKが放送できなくなった時などを考えると、民放を指定公共機関に指定できる仕組みは必要。なお、報道の自由を制限することは全く考えていない。
4 国際法及び国際慣例の遵守
自衛隊法第88条と全く同じ規定ぶりであり、重ねて規定する必要性に乏しい。
5 施行期日について
国民保護法制と密接な関係を有する条項について、国民保護法制の整備をまって施行することについては、検討の余地があると考えるが、理念や基本的手続きなどその他の条項については、一日も早い成立、施行を図ることが国民の期待に応えることになる。
■緊急事態への対処及びその未然の防止に関する基本法案(以下基本法案という。)に係る問題点について。
1 憲法で保障された国民の権利と自由を法律で更に制度化することは、かえって憲法上の権限等をせまく解することにならないのか。(第2条〜第6条)
2 緊急事態の概念に自然災害をもとり入れることは、現在の災害対策基本法や原子力災害対策特別措置法との上下関係に連なり、現在機能している諸法との整合性や無用の混乱を招くことになり、十分な検討が必要と思われる。(第1条)
3 緊急事態に限らず行政各部が実施した措置については、国会は絶えず当該措置の相等性に係る事後的検証は、法律がなくても行われるべきものである。(第9条)
4 危機管理庁を常設機関として設置すると現在の警察、消防、原子力委員会、自衛隊、災害における地方自治体の諸活動との合理的な区分けが必要になり特に各地方支分部局まで置くことにすると行政改革、地方分権の流れに逆行することになるおそれがあり、慎重に検討する必要がある。(第2条)
5 政府開発援助は、我が国存立の為の施策の一部とはい云え緊急事態法の一環になるかどうか議論を要すると思われる。
以上の観点から基本法制定には、なお検討すべき問題が多く、会期がせまっている今国会において、成立を図ることは困難である。
(原文のまま)
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