衆議院の武力攻撃事態への対処に関する特別委員会において8日、参考人からの意見聴取が行われ、早稲田大学大学院教授の小尾敏夫氏らが意見陳述を行った。小尾参考人は民主党による対案提出を評価し、緊急事態法制において議論されるべきポイントを4点にわたって述べた。
小尾参考人はポイントの第一として国際情勢の変化にふれ、「冷戦時代からテロの時代に移り、9・11の米国同時多発テロ事件以降、世界情勢は大きく変化している」と分析。さらにイラクから北朝鮮へと世界の関心が移るなか、有事法制法案が審議されるに至ったことを評価するとともに、野党第一党・民主党が対案を提出したことを重視するとの見方を示した。
第二に、「国会関与の問題」を取り上げ、非常事態・緊急事態において国民の最高議決機関としての国会の関与の重要性を指摘。小尾参考人は、有事の事態・緊急事態下では三権分立でありながら、往々にして国会は軽んじられる傾向があるとし、「国会の関与は最大限配慮すべき」と念押しした。
小尾参考人は第三に、「基本的人権の重視」を謳う必要性を指摘。憲法で保障する基本的人権を個別法で強調する必要はないとする見方に関しては、「日本国憲法が有事・非常事態を想定しているとは思えない」と反論。そうした観点から、有事・緊急事態において、基本的人権をどう守るかに改めて言及すべきだとした。
小尾参考人は第四のポイントとして「国民保護という視点から危機管理庁を創設してほしい」と力説。現在の日本の体制では国民の生命・身体・財産を瞬時に守ることはできないとする見方を示し、中央政府・地方政府・民間組織を連係したネットワークを統括・指揮する組織として、危機管理庁の構築が必要だとした。
参考人に対する質疑に立った民主党の渡辺周議員は「日本国の周辺に脅威が存在するなか、この法は攻める法律ではなく守るための法律だ」とし、国民の生命・財産を守るという観点から民主党案を作成したと述べた。
民主党案に盛り込まれた危機管理庁の創設をめぐり渡辺議員は、平時はどんな役割を果たすべきかを小尾参考人に質問。元防衛庁統合幕僚会議議長の西元徹也参考人に対しては、危機管理庁の創設構想に関する見解を質した。
小尾参考人は「有事に対する専門家ともいえる、民間防衛という視点での地方公共団体を含めたNPO・ボランティア等のネットワークの構築はまだまだ不十分。平時には、欧米を例に、その人材育成・教育訓練・啓蒙活動・研究活動等を行ってほしい」と述べた。
西元参考人は「危機事態においては時間が勝負。そのためには一元的な指揮・統制が重要」とする見方を示し、阪神淡路大震災での経験も踏まえて危機管理庁の必要性を訴えた。
また民主党案に盛り込まれた「国会関与、国会への情報提供の問題」を渡辺議員は改めて取り上げ、松阪大学政策学部教授の浜谷英博参考人に見解を求めた。浜谷参考人 は「すべての情報開示は無理だが、民主国家としての責務である国民への情報開示を求めるのは当然」とした。
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