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2003/05/15
【衆院青少年特】インターネット異性紹介事業規制法案を可決
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衆議院青少年問題に関する特別委員会で15日、内閣提出の「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律案」に関する質疑・討論および採決が行われた。民主党は、同法案が意図する規制は有効性・透明性・明快性を兼ね備えて初めて意味を持ち得るにもかかわらず、政府提出法案はこの点で難点があり、弊害の方が多いとして反対したが、同法案は与党3党などの賛成多数で可決した。また、政府に児童の利益の保護などを求める附帯決議も全会一致で採択された。
 
 同法案はインターネット異性紹介事業、いわゆる“出会い系サイト”を利用し、18歳に満たない児童を性交等の相手となるように誘引するのを禁止するとともに、児童の出会い系サイトの利用防止措置を定めることで児童買春や他の犯罪から児童を保護するという趣旨のもの。
 
 質問に立った民主党の水島広子議員は「法案成立後、実際には子どもたちがどのように扱われるか検証しておく必要がある」として、第6条に違反した児童への対応について質問。谷垣国家公安委員長は専門的知見を有する家庭裁判所が当該児童の状況に応じた適切な保護処遇をとるなどと答弁した。水島議員は「子どもの問題行動の裏には生育関係の問題だけでなく、精神障害などの可能性も考えなければならない」とする考えを示し、現行の家庭裁判所では専門知識をもった適切な対応ができないのではないかと疑問を呈し、十分な検証の必要性を指摘した。同時に罪を犯した児童への対応機関として家庭裁判所を位置づけるのではなく、子どもの権利を守るセンターとしての根本的な活用を考えるべき点を水島議員は提議した。
 
 また水島議員は、第6条で誘引行為をしてはならないと明確に禁止しているからには、第16条の罰則規定において児童を適用除外とすべきだと主張。「ストックホルム宣言の精神を生かして、個々のケースによって現状にあった多様な対応をするには、むしろ第16条を児童に対して適用除外とし、第6条に違反行為をした児童について関係行政機関の連携下での適切な指導等を行うとした方がいい」と水島議員は提案。同時に、児童への教育を徹底するため、法務省・文部科学省等、関係省庁の連携の必要性等を提示した。

 質疑後、民主党の石毛えい子議院が反対討論を行った。石毛議員は「出会い系サイトを媒介にしたものを含め、異性交際に係る犯罪を防ぐには、売買春を行う者、その斡旋や管理を行う者、誘引や勧誘の媒体を提供する者等への規制強化が必要。また、児童保護の観点からも、子ども達に対して社会的規範が存在し、行った行為に対して一定の措置がありうることを示すことが必要」との認識を示しながら、政府案はむしろ弊害の方が多いと断じた。
 
 政府案に反対する理由の第一として石毛議員は、警察がインターネット異性紹介事業者等を規制するスキームが曖昧・不透明である点を指摘。「事実上警察の裁量に大きく任され、その結果、事業者に対して警察が恣意的かつ過剰に介入したり、逆に警察と業界の馴れ合いで運用が決まったりする懸念が拭えない」と指弾した。
 
 反対理由の第二は、本来必要であるべきインターネット異性紹介事業者等に対する規制が、実効性の乏しいものになっている点。悪質なサイトを排除したり、子どもの利用を防止したりすることに対して事業者に努力義務規定を課すにとどまっていること、「児童でないことの確認」方法が甘いこと、IT技術の高度利用を念頭に置いて規制する観点が弱いことなどを、石毛議員は列挙した。

 石毛議員は反対理由の第三として、児童買春・児童ポルノ法案の改正という抜本的な対策を怠っている点を指摘。骨太の対策には手をつけず、出会い系サイトのみに対象を絞った本法案のような中途半端な規制案の導入では効果は少なく、弊害が大きいとした。

 反対理由の第四として石毛議員は、児童が受けるおそれのある心身の被害に対する配慮やケアが不足しており、児童の保護育成や教育という観点が極めて弱い点を指摘。さらに第五に、政府の準備不足と無責任な姿勢を指摘し、同法案への反対を表明して討論を締め括った。
 
 なお、採決後、民主党・無所属クラブは他の6会派と共同で附帯決議を提案し、全会一致で可決された。決議は、政府に対して、児童の生育環境・発達の状況を十分に考慮すること、児童の権利に関する条約に基づいて児童の最善の利益が図られるよう努めること、第六条に違反した児童に対する相談・指導等の体制の充実・強化を図ること、などを求めるもの。

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