参議院本会議で23日、個人情報保護関連法案の討論・採決が行われ、政府提出の5法案が与党3党などの賛成多数で可決、成立した。民主党はじめ野党4党は、個人情報保護特別委員会に5法案への修正案を共同提出し(否決)、本会議採決でも政府案に反対したが、及ばなかった。
採決に先立つ討論で発言に立った民主党・新緑風会の内藤正光議員は、5法案全体に対して、自己情報コントロール権やセンシティブ情報の慎重な取り扱いについての規定が欠如しているという根本欠陥を改めて指摘。また、個人情報保護法案における主務大臣制の矛盾、行政機関個人情報保護法案における制度管理のずさんさなどを厳しく批判し、「官僚による国民監視・管理をめざすもの。到底賛成できない」と強く訴えた。
成立したのは、「個人情報の保護に関する法律案」「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律案」「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律案」「情報公開・個人情報保護審査会設置法案」「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律等の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」の5法案。
また、この日の本会議では、政府提出の国立大学法人関連法案、職業安定法および労働者派遣法の一部改正案の趣旨説明と質疑も行われた。
国立大学法人関連法案の質疑に立った民主党の岩本司議員は、法案がその趣旨において「個性豊かな魅力ある国立大学を育てる」としているにもかかわらず、中身は大学への国の関与を深め、各大学の主体的な発展を阻害するものだ、と批判。法案では文部科学相が定めるとされている「中期目標」(国立大学の6年間の運営方針の骨格)を大学自身が策定するとした場合の問題点、官の視点のみで行うことになっている大学の評価に、大学関係者、学生、学会、経済界などからの多元的な視点を導入することに対する見解などを質した。
遠山文科相は、大学自身による中期目標の策定について、「高等教育全体のあり方」や「財政上の観点」から問題がある、などと抽象的にしか否定できず、多元的評価の導入に関しても、文科省が設置する評価委員会に広い分野から委員を募ることを対置したにすぎなかった。
職業安定法および労働者派遣法の一部改正案の質疑に立った民主党の山本孝史議員は、冒頭、SARS対策について取り上げ、感染した台湾の医師が観光で訪日していながら有効な対応が取れなかった問題について、坂口厚労相に反省すべき点を質した。厚労相は国の対応の反省点として、医療従事者への対応を考えていなかったこと、国が中心となる広域的対応が遅れたこと、情報公開・風評被害への具体的対応が準備できていなかったこと、の3点を挙げ、今後オペレーションセンターの設置や検疫体制の強化などを急ぐ意向を明らかにした。
労働者派遣法改正について山本議員は、派遣期間の上限延長による雇用の不安定化、紹介予定派遣の解禁による差別的求人の拡大、などの問題点を指摘し、労働者保護策を盛り込まない改正案は派遣労働者の労働環境を悪化させるものだ、と批判。答弁に立った坂口厚労相は、派遣労働者の労働環境の改善には取り組むとしながらも、「派遣労働者の労働条件が一般労働者に比べてすべての場合劣るわけではない」「厳しい雇用情勢の下で、一定の雇用期間を経験するという役割も果たしている」などと述べ、危機感の欠如をさらけだした。
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