参議院決算委員会で7日、締めくくり総括質疑が行われ、民主党・新緑風会の神本美恵子議員が質問に立ち、少子化に与える教育費負担の影響、所得格差社会における国の教育支援のあり方等に関して、小泉首相はじめ小坂文部科学大臣の見解を質した。
冒頭、神本議員は昨年来追及してきた警察問題を取り上げ、会計検査院が内部監査等を元にまとめた警察における裏金作り・不正流用の図式は、一昨年来から新たに問題視されている都道府県の労働局の不正経理問題等と似通った構造にあると指摘。会計担当職員による書類偽造・水増し請求・カラ出張・架空領収書といったやり方が組織的・慣行的に横行しているとの見方を示したうえで、こうした不正が根絶しないのはなぜか首相に見解を質した。首相は「決算重視という観点から本日も全閣僚出席のもとに審議が行われている」なとど的外れな答弁をしたうえで、政府としてもこの決算委員会の審議を重視して国のお金の使い方について、どういう点にムダがあるのかを検討しているなどと、繰り返し的外れな答弁。神本議員は、「ムダを無くすのはその通りだが、問題にしているのは不正」だと指摘し、行政庁職員の意識改革も必要だが組織の在り方そのもの問題だと言及した。そのうえで、こういった不正の背景には天下りや随意契約の問題があるとの認識を示し、同様の事件発生を未然に防ぐためにも、天下り禁止の対象を課長以上だけでなく課長以下にも広げるなど、実効性あるものにしていくべきだと首相はじめ竹中総務大臣に問題提起した。
続いて合計特殊出生率が5年連続で過去最低を更新して1・25人となったことに関しては、こうした少子化の背景には出産から大学まで子どもを育てた場合の教育・育児費が公立校で約3000万円、私立校を選んだ場合6000万円を超えるなど、子どもにかかる費用負担が大きすぎることも関係しているとの見方を神本議員は示した。首相はこの点について「一因ではあるが、すべてではない」と答弁し、負担感よりもよろこびを感じられるような施策が必要などと繰り返した。神本議員は、「少子化は負担感の方がよろこびよりも増えている結果だ」として、「子育て・教育にお金を配分すべき」と強い口調で小泉首相に重ねて求め、政府の予算の使い方を改めるよう指摘した。
また、増大する傾向にある低所得層にとって、教育は生活を圧迫するものであり、「公立高校と私立高校の併願をしたくても私立に通わせる経済的余裕がないため併願できない」といった状況など、家庭の所得によって進路が制限される状況があることも神本議員は取り上げた。首相は、就学したいという人にはその機会を用意するのが教師の役割だなどとする見解を示すとともに、奨学金・減免・就学援助などの制度によって学ぶ機会を得ることができるとの考えを繰り返し提示した。
そうした答弁を受けて神本議員は、「制度があってもこういう状況になっている」と述べ、国が用意している現行制度では所得格差による進路選択制限を打開できないのが現状であることを重ねて指摘。同時に、就学援助率が高い地区は学力が低く、就学援助率が低い地区は学力が高いという相関関係が出来上がっていることも明らかにし、家庭の経済力の差によって子どもの学力差が広がっている現状に言及。国が謳う教育機会均等を逸脱しかねないこうした現状に対し、国として施策を講じて行くよう強く求めた。
最後に、「格差が拡大し、低所得層の子どもたちが教育の機会や進路を選ぶ機会を狭められている。また、(所得格差によって)学力にも差が出てきているということについて、このままで国は本当にいいのかということを言いたいのだ」と訴えた神本議員は、貧困が連鎖しないように、教育にもっとお金をかけるべきだと強い口調で主張。そうした視点に立った場合、教育費削減の方向に進もうとしている政府の施策は明らかに誤りであると指摘し、首相に教育重視に方向転換するよう小泉首相に注文をつけ、質問を締めくくった。
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