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2003/06/11
【党首討論】菅代表、マニフェストなき政府与党の無責任政治を批判
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民主党の菅直人代表は11日、今国会4度目の党首討論に臨み、イラク大量破壊兵器問題、「マニフェスト」に対する小泉首相の考えを追及した。主なやりとりは以下の通り。

●イラク大量破壊兵器問題

菅 ブッシュ米国大統領がイラクへの軍事攻撃を決定した翌日、小泉総理は「イラクが隠し持っている大量破壊兵器が他の独裁国やテロリストの手に渡ると極めて危険だ。それを防ぐために米国の武力行使を支持する」と言われた。それに対して私は、「国連中心の査察がかなり効果を上げてきているので、もっと強化して査察を継続すべきだ。武力行使は反対だ」と申し上げた。その後、イラク戦争が始まり、バグダッドが陥落し、フセイン政権が倒れて、もう2ヵ月も経過した。この間、米軍を中心に大量破壊兵器の発見に努めてきたわけだが、今日まで発見されたという報告はない。逆にイギリス議会などでは、情報機関が当時伝えていたことは間違った情報に基づいている、誇張されているとの声もある。あるいはCIAの昨年の報告でも、大量破壊兵器があるとする有力な証拠はないとされている。国連監視検証査察委員会のブリクス委員長も大量破壊兵器は、自分たちの手で廃棄されていたのではないかと言っている。

 今、総理が用意されているイラク新法においても、大量破壊兵器の処理を支援するという一項目を入れると報じられている。それは、今日もそれが隠し持たれているということを前提にして、新法を出そうとしている表れ。これから1、2ヵ月、さらに多くの人を動員して調査すると米国は言っているが、発見されない場合、総理はどうされるのか?

小泉 いずれ発見されると思っている。国連の協議でも大方の国はイラクが大量破壊兵器を保有しているだろうとの疑念は払拭しがたいという考え方だった。今後を注視する。

菅 発見されると確信をもたれるのは、個人としては結構。しかしその確信を前提として、政府として米国の軍事行動を支持した。さらにはそれを前提にして新たな法律も出そうとしている。それは単に個人の思いを越えている。だから私は今後発見されない場合、どうされるかをお尋ねしたのだが、相変わらず真正面から答えようとされていない。この問題は、これからの国会審議、あるいは次期総選挙の前までには結論が出る。その時点で、総理の国民に対する態度、国際社会に対する態度を見極めていきたい。

●マニフェストについて

菅 (英国労働党の1997年と2001年の総選挙向けマニフェストを示して)マニフェストはただのスローガンではない。国民と政党との契約と位置づけられている。たとえば97年のマニフェストに挙げられた10項目は「5・6・7歳の子どもたちのクラスを30人以下の学級にする」などと非常に具体的に書いてある。そして01年の春に出されたマニフェストには「今年9月には5・6・7歳の子どもたちのクラスで30人を超えるところはなくなります」とある。つまり、契約が実行されたことがきちんと検証されている。

 私たち民主党は次期総選挙に向けて、こうしたマニフェストをつくる準備に入っている。政権与党である自民党がきちんとマニフェストを出し、政権交代を求める民主党も私たちのマニフェストを出し、その2つを比べてどちらがいいかを問う選挙になることが、国民にとって最も望ましいと思うが、小泉総理としては、自民党としてマニフェストを出されるおつもりはあるか?

小泉 マニフェストは国民の多くにとってはなじみが薄い。名前は変わっても公約のことだ。公約をそれぞれの政党が掲げて戦うのは当然であり大事。自民党としては当然公約を掲げ、次の選挙で戦う準備を始める。公約を掲げて戦うのはいかなる政党にとっても大事。

菅 もともとの公約と意味がちがうから申し上げているのだ。これまでの公約は、「活力ある日本をつくりたい」とか、希望的なことを並べた。あるいはその公約が必ず次の内閣で実行されるという、いわゆる国民との契約という認識が薄かった。前回の参議院選挙で、総理は郵政事業民営化を公約に掲げた。しかし、ある自民党公認候補は郵政事業は絶対に国営を守ると訴えた。そしてその候補者と総理は握手したポスターを作った。総理が言うことと、候補者が言うことがバラバラ、こういう党にはマニフェストを出す資格がないのだ。高速道路の民営化についても、総理が選んだ推進委員会はいろいろと民営化の方針を出している。しかし、自民党の道路族議員は高速道路の計画の見直しに反対し、扇大臣が率いる国土交通省までもが、まったく違うことを言っている。こんなバラバラな政党にマニフェストがまとめられるのか。わが党は私が責任をもってまとめる。総理は自民党をまとめあげてマニフェストを出されるおつもりがあるか。はっきりお答えを。

小泉 政党にはいろいろ議論がある。しかし、最終的にはまとめていかなければならないもの。自民党も民主党も、ある問題については意見が違った議員がたくさんいる。最終的には議論が集約するに従ってまとまっていく。過程での議論の賛否両論はいいのだ。結果的には大きな方向に沿って協力していく。寛容と忍耐の精神も大事だ。

菅 多数党が与党となり、内閣を組織して総理を決める。つまりマニフェストは内閣と国民との契約でもあるはず。ところが、自民党は常に党と内閣とが別々に物事を決定する。党はどうなっているかというと、関係省庁の官僚がやってきて、官僚のシナリオにそって、族議員とともにその役所の利益を主張する。そして、官僚は同時に自分の役所の大臣にレクチャーして洗脳し、ほとんどの大臣が、各役所の利益代表になってしまっている。これが現状だ。マニフェストは、単に党の公約を越えて、官僚とは別に、自分たちが多数党となって内閣を組織したときには、このことを実行すると国民に対して示す約束なのだ。「小泉総理はこう主張するが、他の人は別のことを言っても、それは許容と寛容でいい」などとしていては、政権選択の選挙にならない。「郵政民営化なのか否か、公団民営化なのか否か」内閣を組織したときの方針を示さないままに、政権を争う選挙をしようとしているのが小泉総理なのだ。総理就任後2年間、小泉さんがいろいろ格好のいい発言をしても、何一つ物事が進まなかった最大の原因がここにある。

小泉 マニフェストがよくて公約が悪いとは思っていない。国民にとって公約は大事、政党にとっても公約は大事。選挙のときには各政党とも公約を掲げて戦うべきだと思うし、そのなかで各政党の主張を国民にわかりやすく説明するのが政党の責任だと思う。

菅 この議論は今後も続けたい。かなりよく国民のみなさんに理解していただけたと思う。つまりマニフェストは単に政党の考え方の一つを掲げたのではない。国会で多数派を握って内閣を組織した場合はこういうことを実行しますという具体的な約束を提示すること。与党と政府がバラバラで、それぞれが官僚のお膳立てにのったような官僚主導の政権をこれからも続けていいのか。それが日本の行き詰まりの原因だということ、そして私たちが政権を握るときには、それとはまったく違う政権を作り上げていくことを国民のみなさまに申し上げて、私の質問を終わる。

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