山本孝史参議院議員は1日、参議院予算委員会で締めくくり質問に立ち、混合医療、年金制度、社会保険庁の業務などで、国民の立場に立った提案し、小泉首相から前向きな答弁を引き出した。
山本議員は解禁となった混合医療(保険適用と非保険医療との混合)について保険適用外の投薬、医療技術が「普遍性、有効性、安全性が認められたら、保険適用とすべき」と提案。首相は「適用できるよう十分な対策が必要」と前向きに答弁した。また山本議員が、患者に対して「安全性、有効性について文書での説明を義務づけるべき」としたのに対しても「賛成であります」と明確に答弁。患者の知る権利確立へ前進した答弁を引き出した。
年金制度改革では、民営化された場合の郵政職員の加入する年金の種類はどうなるのか、「そのボリュームからしても、年金制度の一元化にとっても重要だ」として質問。首相は「法案審議の際に十分に議論を」とするだけで明確な回答を避けた。
また、山本議員は社会保険庁の解体についての発言の真意を質した。尾辻厚労相は「組織の存続を前提とはしない。表現はいろいろあろうが、自ずと明確」と明言。その上で山本議員は社会保険庁の業務に関して、年金と政管健保に分け、政管健保は地方へ任せ、年金については、支払いと徴収とに分け、支払いは年金庁、徴収業務は国税と同じ方が効率的、と提案。首相は「よく検討する必要がある」と答弁。厚労相も「一番大事なことを指摘いただいた。その通り」と答えた。
被災した住宅再建に関して山本議員は、兵庫県が県独自に共済制度を導入しようとしていることを紹介し、「共助の考え方で、全国民が加入する共済制度」を提案。北川国土交通相は兵庫県の対応について「まとめられたことに敬意を表する。このようなやり方は、検討し得る課題」と答えた。
最後に、山本議員は、在外被爆者援護のために被爆者援護法の改正と、ホームレス自立支援のために就労機会の提供を求めた。
山本孝史議員に続いて白眞勲議員が質問に立ち、新潟県中越地震への対応、北朝鮮による拉致問題等について、小泉首相および関係大臣に質した。
白議員は、新潟県中越地震の被災された方々は、感謝を口にするだけで、不平不満を表に出さないのが県民性でもあるとの見方を示した上で、「声なき声を聞き届けて改善していく余地はある」として、ニーズを汲み取って支援を行うよう、小泉首相に注文をつけた。これに対しては小泉首相も「本音の部分で、もっとしてもらいたいというのはあると思う」と述べ、政府としても十分配慮し、被災者が立ち上がるための対処を行うとした。
白議員は続いて、拉致被害者横田めぐみさんの「遺骨」が別人のものだったとした鑑定結果の捏造をめぐり、「誠に遺憾である」とする町村外相や小泉首相のコメントに対し、「北朝鮮に対して意味が伝わるように強い口調がいい」として、日本政府の姿勢を明確に示すよう要請。小泉首相は「総理大臣がそのまま感情を表せばいいというものではない」としながらも、「憤りを感じる」との表現で自らの思いを語った。
白議員はまた、北朝鮮の貨客船・万景峰(マンギョンボン)92号の積荷に霜降り牛肉など、高級品が入っている点について、「チェック機能が甘いのではないかとの見方もある」として、税関等による船内の検査体制の強化の必要性を指摘。谷垣財務相は「水際監視はきちんと行っていく」との姿勢を示した。さらに白議員は、北朝鮮に対する日本の食料支援が中断している点を「一種の経済制裁ではないか」と質したのに対し、町村外相は「現在、人道支援を行える環境にないだけだ」と答弁。白議員が「人道支援と拉致問題は関係ないのか」と質したのに対し小泉首相も「人道支援は人道支援、拉致問題の見返りで行っているわけではない」と述べた。白議員は「結局は場当たり外交だ」として、政府として明確なビジョンを持つよう指摘した。
白議員に続いて質問に立った犬塚直史議員は、国際刑事裁判所(ICC)に対する日本政府の取り組みを中心に小泉首相らを質した。
犬塚議員は冒頭、「ICCはまさに力・恐怖の支配をやめ、法の支配をつくろうというものだ」と語った上で、30日に行われたイラク国民議会選挙の正当性をめぐり、「スンニ派に受け入れられるだろうか」として、町村外相らの認識を質した。町村外相は「スンニ派とシーア派では投票率も違うだろうという想像はできる」としながらも、今後は新政府の姿勢次第でスンニ派の対応も変わってくる、との見方を示した。犬塚議員は「何がなんでも投票箱を守るというのが民主主義でないと思う。イラクの人自身が正当性を感じ、政治に参加することが民主主義であるはず」と述べ、国連憲章に照らして、日本の自衛隊派遣がどう位置付けられるか、小泉首相に答弁を求めたが、首相は「開戦の経緯はともかく」などと語ったうえで、イラク人が自らの意志によって国づくりをしようとしている。日本には日本の役割があるということで自衛隊を派遣している。イラクが安定するよう、支援を続けていく」などと答弁するだけだった。犬塚議員は「後から結果の責任をとろうとしているが、開戦時にはっきりと考慮したとは思えない」と断じ、国連憲章に照らした行動とはいい難い実態を極めて問題視した。
また犬塚議員が、ICC未締結の背景について質したのに対し町村外相は、国内法との精緻な整合が必要であるため、締結に至っていないとの考えを示した。そうした答弁を受けて犬塚議員は首相に「何とかして力の支配をやめていこうということで、ICCに対して、世界97カ国が参加している。総理がいつもおっしゃる自助・共助・公助は、自衛が自助、日米同盟が共助、最終的に人間の安全保障を確立するにはこのICCに代表される公助だと思う」として、小泉首相に対して締結に前向きに取り組むよう強く求めた。
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